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歪ーいびつー

第18章 ー真実ー



花束を持って階段を上る俺は、夢ちゃんの事ばかり考えていた。
やっと邪魔な虫を全て排除できた事が嬉しくて、ネックレスを取り出すと貝殻にキスをする。

「夢ちゃん……」

夢ちゃんとお揃いの貝殻を眺め、うっとりとする。

「やっとだね、夢ちゃん」

そう言ってネックレスをワイシャツの中へしまうと、目の前の扉を開けて夢ちゃん達の待つ屋上へと出た。

「お待たせ。ごめんね、暑い中待たせてちゃって」
「大丈夫だよ。楓くんこそ、お花買いに行ってくれてありがとう」

夢ちゃんの前まで行くと、とても可愛らしい笑顔で夢ちゃんが答えてくれる。

屋上のアスファルトに花束を置いた俺は、そのまま静かに手を合わせた。
……これで夢ちゃんは俺のものだね。
心の中で涼達に向けてそう呟く。

「三人になっちゃったね……」
「そうだね……」

そう呟きながら立ち上がった夢ちゃんに返事をすると、俺は夢ちゃんを追うようにして立ち上がった。
やっと……やっと邪魔な虫が全員いなくなった。俺は嬉しさを堪えて俯くと、その顔を隠すようにして片手で覆った。
堪え切れなくなった喜びに口元が緩んだその時、夢ちゃんの左手首に付けられたブレスレットが視界に入る。
俺は緩んだ口元を元に戻すと、ゆっくりと空へ向けて顔を上げた。

あぁ……確かあの時……朱莉ちゃんに見られたっけーー。
指の隙間から、目だけを動かして朱莉ちゃんの方を見る。するとそこには、蒼白い顔をしてカタカタと小さく震えながら俺を見つめる朱莉ちゃんがいた。
俺は口元を歪ませるとニタリと笑った。




ーーまだ、虫が一匹残ってた。





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