歪ーいびつー
第2章 小5ー夏ー
容赦なく照りつける太陽に、ジワリと汗が滲む。
額に流れる汗を片手で拭うと、私は持っていた麦わら帽子をかぶりなおした。
「晴れてよかったぁ」
前日まで降っていた雨が嘘のように、雲ひとつない青空を見上げて呟く。
楽しみにしていた林間学校が中止にならずに良かったと、思わず笑みがこぼれる。
ジリジリと照りつける太陽に、心地よい風が吹いてフワリと髪を撫でてゆく。ーー気持ちいい。
あまりに心地よい風に、そっと目を閉じると両手を広げてみる。
川の流れる音、鳥のさえずり、緑の匂い。
それらを肌で感じ、風に乗ってまるで空を飛んでいるかのような感覚。
本当に飛べたらいいのになぁ……。
そんな事を考えていると、少し強めの風にあおられ足元がぐらつく。
「……あっ」
倒れる。そう覚悟した時、後ろから誰かに肩を掴まれた。
「夢、大丈夫?」
そう声を掛けられ、倒れないように支えてくれたんだと気付く。
「うん。……ありがとう、涼くん」
ホッと胸を撫で下ろしながら振り返ると、ニカっと爽やかに笑う涼くんと目が合った。
涼しげな目元に通った鼻筋、小麦色に焼けた肌がよく似合う。
整った顔立ちながら、その嫌味のない笑顔には思わず見惚れてしまう。
「皆もう先に行っちゃったから、俺らも急ごう」
そう言った涼くんの目線を辿ると、先生に引率された生徒達が楽しそうに話しながら川辺を歩いている姿が見える。
「うん」
背負っているリュックを軽く背負い直すと、私は涼くんと並んで歩き出した。
「足元悪いから気をつけて」
「うん、ありがとう」
差し出された手に自分の手を添えると、涼くんはそれをキュッと握りしめた。
その行為が何だか凄く恥ずかしくてーーでも凄く嬉しくて。
私はいつまでもそうしていたいと思った。