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歪ーいびつー

第5章 奏多



「「「「「夢! 」」」」ちゃん! 」

俺は急いで夢の元まで駆けつけると、蹲《うずくま》る夢を抱き起こした。

「ほら、夢。そんなところにいつまでも座ってちゃ駄目だよ」
「夢ちゃん、痛いところない? 」

心配そうに夢の手や身体に付いた土や葉っぱを払ってゆく楓。

「夢、大丈夫……? 」
「こめん、夢。光につられて虫が寄ってきたんだ。……夢虫嫌いだもんな。ホントごめんな」

心配そうに見つめる朱莉と、申し訳なさそうな顔をする涼。

「っ……ぅ……っ……こわっ……ぃぃ」
「ほらぁ、夢。もう泣かないで? 怖くないから……ね? 」

怖がる夢を宥《なだ》めるようにして、優雨がハンカチで涙を拭ってゆく。

「皆で一緒に行くんでしょ? 」

少し落ち着きを取り戻したのか、優雨にそう言われた夢は涙を流しながらも小さく頷いた。

「夢……本当に大丈夫? 」

相変わらず心配そうに夢を見つめる涼。

「大丈夫だよ、夢。俺がついてるから」

俺はそう言うと、安心させるように夢の小さな右手を握った。

「じゃあ……こっちは俺ね? ……これでもう怖くないね? 」

夢の左手を握った楓がそう言って小首を傾げて顔を覗くと、躊躇《ためら》いがちに小さく頷いた夢。

「あと少しだから頑張ろう、夢」

涼が優しい笑顔でポンポンと夢の頭を撫でてあげると、夢はポロポロと涙を流しながらも大きく頷いた。

「じゃあ行こうか」という涼の言葉を合図に、改めて出発となった俺達。
左側にいる夢を見てみると、グズグズと泣きながらも一生懸命に歩いている。
その姿を目にした俺は、夢を守ってあげたいーーそう強く思った。

暫くすると泣き止んだ夢は、時折ビクッと身体を揺らして怖がってはいたものの、その表情は幾分か柔らかくなっている気がする。
俺はホッとしたのと同時に、ただただ夢が可愛くて握っていた手にキュッっと力を込めた。
ずっとずっと、俺がこうして夢の側で守ってあげたい。
そう思っていたのにーー。

「ーー夢、おいで」

そう涼に呼ばれると、夢は簡単に俺と繋いでいた手を離してしまう。
そうして夢はーー俺の隣からいなくなった。





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