歪ーいびつー
第7章 ー5月ー
「それじゃあ夢、また後でね」
そう言って私の首を撫でる奏多くんは、昨日付けたばかりの首元の印を眺めて恍惚《こうこつ》とした表情をさせる。
奏多くんは私の耳元に顔を寄せると、「虫には気をつけるんだよ」と告げてから自分の教室へと入って行った。
その後ろ姿を見送った私は、首元を隠すように髪を持ってきてから自分の教室へと入る。
席に着き、鞄から教科書とノートを取り出すと机の中に入れようとした。すると、何かにコツンとぶつかる。
……え?
あるはずのない物の存在に驚く。
毎日のように嫌がらせを受けている私は、自分の持ち物を机に入れたままにして帰る事などないのだ。
何かと思い机の中を覗いてみると、そこには白い箱があった。
私は箱を取り出すと蓋を開けてみる。
「……ひっ!! い゛やあぁぁぁぁぁーー!! 」
私は持っていた箱を投げ出すと椅子から転げ落ちた。
床に落ちた箱からは大量の虫の死骸が散らばり、周りにいた生徒達も驚きの声を上げる。
私は泣き叫びながらガクガクと震える身体で後ずさろうとするも、うまく身体が動かない。