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歪ーいびつー

第10章 楓



夢ちゃんの様子を見る為に保健室へ向かっている途中、女の子に捕まりすっかり遅くなってしまった。

最近夢ちゃんに避けられていた俺は、今日久しぶりに夢ちゃんに触れた気がする。
保健室で見た夢ちゃんの首に付けられたいくつかの跡。
あれは奏多に無理矢理付けられたのだろう。
奏多とだって、本当は付き合っていないはず。それは見ていればわかる。
奏多を見る夢ちゃんの目は怯えているから。
……夢ちゃんまだいるかな。

「奏多!! 夢を離して! やめて! ……やめてよ! 」

ーーー!?

保健室の近くまで来ると、突然聞こえてきた争うような大きな声。
次の瞬間、奏多に無理矢理引っ張られる夢ちゃんと、それを必死に止めようとしている優雨ちゃんが保健室から出てきた。

「ーー何やってるんだよ! 」

俺はそう言うと三人の元へ駆け寄り、奏多の肩をグッと掴んだ。

「奏多、何やってんの」

チラリと目線を下に向けると、奏多に腕を掴まれた夢ちゃんが泣いている。
その横に視線を移してみると、今にも泣き出しそうな顔をしている優雨ちゃんが……。

「……何? この状況。奏多何やってんの? 」
「楓には関係ないよ」

冷めた顔をした奏多が、俺をチラリと見てそう告げた。

「夢を離して! ……夢を離してよ! 」

奏多の腕を掴む優雨ちゃんが、必死に奏多から夢ちゃんを引き離そうとする。

「離してあげなよ、夢ちゃん泣いてるよ」

俺は奏多の腕を掴むと、その手にギュッと力を込める。
離そうとする気配のない奏多に、俺は掴んだ奏多の腕を無理矢理夢ちゃんから引き離した。

「奏多……最近おかしいよ? どうしたの? 夢ちゃん泣かせるなよ」
「楓には関係ないって言っただろ」

そう言って俺を睨みつける奏多。

「夢っ……大丈夫? 」

奏多から解放された夢ちゃんをそっと抱きしめると、心配そうに顔を覗き込む優雨ちゃん。
すると、それを見た奏多が突然声を荒げた。

「夢に触るなっ! 」

奏多の声にビクリと肩を揺らして驚く優雨ちゃんと、怯える夢ちゃん。

「やめろよ奏多! 」

奏多の肩を掴むと、今にも夢ちゃん達に向かって行きそうなその動き止める。
奏多は俺の手を振り払うと、俺の胸倉を掴んで鋭く睨みながら口を開いた。

「逃げてばかりいるお前にとやかく言われたくないね」


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