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歪ーいびつー

第10章 楓



「ねぇ、夢ちゃん知らない? 」
「あっちに行ったよ」

近くにいた奏多に尋ねると、そう言いながら岩陰の方を指で指す。
俺は教えてもらった方へ行くと夢ちゃんを探した。

「可愛いっ!綺麗だね……ありがとう、涼くん! 」

夢ちゃんの声が聞こえた方へ行ってみると、貝殻を空にかざして嬉しそうに見ている夢ちゃんがいた。
……そっか、涼に貰ったんだ。
そう思いながらも、声をかけようかと暫く様子を伺う。

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「ーーじゃあ……両思いだね」

涼のその言葉を聞いた瞬間、俺は持っていた貝殻をキュッと握りしめるとその場を後にしたーー。
元の場所へと戻る途中、俺は立ち止まると掌にある貝殻を見つめた。

「ーーそれ、夢にあげるんじゃないの? 」

その声に反応して視線を上げると、いつの間にいたのか奏多が俺の掌の上にある貝殻を見ていた。

「うん……やっぱりやめた」

俺はニッコリ笑ってそう言うと、近くにいた優雨ちゃんの方へと歩いて行く。
優雨ちゃんの隣にしゃがんだ俺は、優雨ちゃんに向かって貝殻を差し出した。

「はい、これ優雨ちゃんにあげる」
「えっ……私? ……夢にじゃなくて? 」

驚く優雨ちゃんは、そう言いながら俺を見つめる。

「うん、優雨ちゃんにあげるよ」

俺は優雨ちゃんを見ながら小首を傾げると、ニコリと笑ってそう告げた。



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