歪ーいびつー
第12章 優雨 3
私の手はガタガタと震え始め、それを隠す様にキュッと握りしめた。
目の前にいる夢を見ると、驚きとも戸惑いとも取れる表情をしている。
「……っ……」
夢の視線に耐えられなくなった私は、夢から視線を外すと俯いた。
「ーー夢、それでも優雨と一緒にいたい? 」
「……」
奏多からの質問に何も答えようとしない夢に、私は俯いたまま瞼をギュッと閉じた。
「わかったら行くよ、夢」
「……っ……私……それでも優雨ちゃんと一緒にいたい。優雨ちゃんは大切な友達だから。優雨ちゃんが……それでも一緒にいてくれるなら……」
夢から発せられたその言葉に、俯いていた顔を上げると私を見つめる夢と視線が合った。
「……っ……夢……本当……に? 」
「うん……優雨ちゃんと一緒にいたい……」
小さく頷いた夢は、縋《すが》るような目をして私を見つめてくる。
私は一緒にいたいと言ってくれた夢の言葉が嬉しくて、「……っうん……ありがとう、夢……っ」と涙を流しながら大きく頷いた。
「……夢は渡さない」
私達の会話を聞いていた奏多は唸るような声でそう呟くと、夢の腕を無理矢理引っ張り始めた。
「ぃっ……痛いっ。奏多くんっ……やめて……っ」
「……っ! やめて! 夢を離して! 」
ーーーガラッ
私達が揉めていると、突然扉が開いてそこから養護教諭が入ってきた。
「ーー?! あなた達、何やってるの?! 」
突然現れた先生に奏多の動きは止まり、夢を掴む力が弱まった。
「ーー夢! 」
その隙に夢を奏多から引き離した私は、夢の手を握ると保健室を飛び出したーー。
昇降口で素早く靴を履き替えると、そのままずっと走り続ける。
途中、何度か後ろを振り返って見ても、先生に捕まったのか奏多が追い掛けてくる事はなく、無事に夢の家の前へと着いた私達。
「優雨ちゃん、ありがとう」
「私こそ……ありがとう、夢」
家の前で抱きしめ合った私達は、「また明日ね」と言って笑顔で別れた。
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