歪ーいびつー
第13章 ー6月ー
「夢、私先生に呼ばれてて職員室に行かないといけないから……少しここで待っててくれる? 」
私を美術室へと連れてきた優雨ちゃんは、申し訳なさそうな顔をしてそう告げた。
今日の放課後は、美術部に所属している優雨ちゃんを待ってから一緒に帰宅すると約束をしていた。
奏多くんから逃げる為。確かにそれはあるけど、優雨ちゃんと一緒にいられる事が嬉しかった私は、優雨ちゃんを待つ事なんて全然苦ではなかった。
優雨ちゃんの描く絵と、絵を描いている時の優雨ちゃんの横顔はとても綺麗で見ていて飽きないから。
「うん、わかった」
「私が出たら鍵閉めてね。今ここの鍵を持ってるのは私だけだから」
そう言って美術室を後にした優雨ちゃん。
私は言われた通りに内鍵をかけると、優雨ちゃんの描きかけの作品の前へと近付いた。
わぁ……綺麗。
コンクールに出展する予定だと言っていたキャンパスには、まだ描き途中ではあるけど綺麗な天使が描かれていた。
私は一通り部屋にあった絵を眺め終わると、椅子に腰を下ろしてさっき買って来た缶ジュースを飲み始めた。
ーーーコンコン
美術室の扉がノックされ、私は持っていた缶を机に置くと扉へと近付いた。