歪ーいびつー
第14章 優雨 4
「何……それ? え……どういう事? 」
怯えた目をした朱莉が、私と奏多を交互に見る。
「優雨が涼を川へ突き落としたんだよ」
奏多は不気味に笑って私を見た後、皆の方へ視線を向けるとそう言い放った。
バレた……バレてしまった……。
皆に……知られてしまった。
私はガタガタと震え始めた身体にそっと両手で触れると、その震えを抑えるようにして自分をギュッと抱きしめた。
チラリと目の前にいる夢を見ると、戸惑いの色を見せていた瞳は徐々に悲しみの色へと変わり……そして、悲痛に顔を歪めるとついに大声を上げて泣き始めた。
「嘘っ! ……っ……そんなの……っ嘘ぉぉ! ……っ……ぅぅ……っ」
ふらりとよろめく夢を支えた楓は、辛そうに顔を歪めたまま優しく夢を抱きしめる。
「ね、ねぇ……何で奏多がそんな事知ってるの? 」
未だに怯えたままの朱莉は、ビクビクしながらも小さな声でそう尋ねた。
「……だって見てたから」
フッと鼻で笑った奏多はそう告げると、大きな声を出して笑い始めた。
その瞳は狂気に満ち、まるで別人にさえ見える。この人は本当にあの、奏多なのだろうか……? 視界に映る奏多の姿に、思わずたじろぐ。
「……っ!? 」
そんな奏多を見て絶句する朱莉と、鋭く睨みつける楓。
「だったら何ですぐに言わなかったんだよ! 助かったかもしれないだろ!? 」
夢を抱きしめたまま、悔しそうな顔をして声を荒げる楓。
そんな楓を見た奏多は、恍惚とした表情をさせてニヤリと笑った。
「馬鹿だなぁ、楓。助かったらダメだろ? 」
ーーー!!?
奏多の発した言葉に、私だけでなく全員が驚きに身を固めた。
こいつ……。ーー狂ってる。
確かに私は涼を殺してしまった。だけど、私はずっと苦しかった。涼を殺したかった訳ではない。
ただ夢を取られたくなくて……気付いたら突き飛ばしてしまってた。
……ずっとずっと、苦しかった。
涼の事を思って泣く夢を見る度に、私は罪悪感と恐怖心に押し潰されそうだった。
夢から涼を奪ってしまった私は、一生償えない罪を背負ってしまったのだと……。