
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第13章 恋人はサンタクロース
「花音、左手出して? 」
ケーキを食べ終わった後、唐突にそう告げたひぃくん。
左手……?何で?
不思議に思いながらも自分の左の掌を差し出すと、クスリと笑い声を漏らしたひぃくん。
「違うよー、こっち」
私の左手を手に取ったひぃくんは、そう言って優しく左手をひっくり返す。
「いつか本物買ってあげるからね」
そう告げたひぃくんは、フワリと微笑むと私の左手薬指に指輪をはめた。
「えっ……」
「クリスマスプレゼント。毎日必ずつけてねー」
フニャっと笑って小首を傾げるひぃくん。
「嘘……私、何もプレゼント用意してないよ……」
毎年お兄ちゃん達としているクリスマスパーティーでは、皆で豪華な食事をして美味しいケーキを頬張る、ただそれだけだった。
プレゼントなんて用意した事などない。
それでも、ひぃくんは毎年何かしらのプレゼントをくれていた。
今思い返せばそうだった気がする……。
毎年くれていたのに、今まで一度も用意した事がない私。
なんて最低なんだろう……。
習慣とは怖いもので、今年も皆でクリスマスパーティーだとばかり思っていた私は、プレゼントのプの字も思い浮かばなかったのだ。
「大丈夫だよー、花音。ちゃんと用意してあるから」
自分の失態に打ちひしがれていると、私の頭を優しく撫でたひぃくんがニッコリと微笑んだ。
そのまま立ち上がってクローゼットの方へと歩き出したひぃくん。
……?
ひぃくんへのプレゼントをひぃくんが用意した……? そんな事できるの?
もはや……
それは私からのプレゼントとは言えないのでは……?
ゴソゴソとクローゼットを漁るひぃくんの背中を眺めながら、ボンヤリとそんな事を思う。
プレゼント……?らしき袋を抱えてニコニコと戻って来たひぃくん。
「はい、これだよー」
私の隣に座ると、ひぃくんは抱えていた袋を私に差し出した。
……何だろう?
差し出された袋を受け取ると、綺麗に結ばれた紐を解いてゆく。
