
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第14章 煩悩はつまり子煩悩?
チラリと掛け時計に目をやりソワソワとする私。
ひぃくんまだかなぁ。
彩奈はもうとっくに来てるのに。
斗真くん達との約束の時間まであと三十分しかないよ……。
大晦日の今日、皆でカウントダウンをする約束をしている私は、未だに来ないひぃくんに焦りを感じ始めていた。
待ち合わせの最寄駅では、クラスの子達と斗真くん達と合流予定なのだが、ここから出発すると二十分はかかる。
もうギリギリだよ……。
痺れを切らした私は、椅子から立ち上がろうとテーブルに付いた手にグッと力を入れた。
「私、ちょっと迎えに行ってくるね? 」
「ダメ」
そう言って、ギロリと私を鋭く睨むお兄ちゃん。
私は顔を痙攣《ひきつ》らせると、立ち上がりかけていた腰を下ろして椅子へと座り直した。
そんなに怖い顔しなくたっていいじゃない……。
ちょっと迎えに行くだけなのに。
一週間前のクリスマス以来、ひぃくんの家への立ち入りを禁止されてしまった私。
正直、あの日は私も助かった。
だけど、あの日のお兄ちゃんを思い出すと今でも恐ろしい。
それを思い出した私は、あまりの恐怖にブルリと身体を震わせる。
「寒いの? 」
震える私に気付いた彩奈が、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「だ、大丈夫だよ。ヒートテック二枚も着てるし」
ニッコリ微笑んで彩奈に返事をすると、その隣にいるお兄ちゃんが口を開いた。
「アイスココアなんて飲んでるからだろ。ほら、風邪ひくなよ」
呆れたようにそう言って、自分の飲みかけの紅茶を私の目の前へ置いてくれるお兄ちゃん。
湯気が出ていてとても熱そう。
「あ、ありがとう……」
震えたのは貴方のせいです、とは言えない私。
ヘラッと痙攣《ひきつ》った笑顔を見せた私は、熱々の紅茶にフーフーと息を吹きかけてからコクリと一口飲み込んだーー。
