
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第15章 君とハッピーバレンタイン
「……別に誰かとデートしてたとかじゃないから」
へっ……?
お兄ちゃんのその言葉に、私は勢いよく顔を上げると隣を見た。
テレビ画面を見ながら、それでも私に向けて話を続けるお兄ちゃん。
「クラスの奴らに呼び出されただけ。でも、思い出したくないから話したくなかったんだよ」
「そうなんだ……」
あの日を思い出しているのか、ウンザリしたように大きく溜息を吐いたお兄ちゃん。
一体何があったんだろう……。
気にはなるものの、隣で疲れきった様な顔をするお兄ちゃんを見て、何だか気の毒になってきた私。
当初の目的であった好みのタイプはまだ聞き出せてはいないものの、イヴに誰かとデートしていた訳ではないと知ってホッとする。
「お兄ちゃんて……今、彼女いないの? 」
これだけは、念の為に確認しておかなきゃ。
彩奈がお兄ちゃんからフリーだと聞いたのは、どうやら秋頃の話しらしい。
もしかしたら……今は彼女がいるのかもしれない。
そんな不安があった私は、コクリと小さく唾を飲み込むとお兄ちゃんの返事を待った。
「夏頃からずっといないよ」
「……! そうなんだっ! 良かったね! 」
お兄ちゃんの言葉に、思わずパッと笑顔になってしまった私。
良かったね、彩奈っ!
お兄ちゃん彼女いないってよ!
嬉しそうにニコニコと微笑む私を見たお兄ちゃんは、不審そうに目を細めると口を開いた。
「何が良かったんだよ」
「……えっ?! あっ、いやー……だって、大変でしょ? 彼女がいると……色々とっ」
思わずお兄ちゃんの前で『良かった』なんて本音を零してしまった私。
アハハッと笑ってその場を誤魔化す。
「彼女がいなくたって毎日大変だよ……」
そう言って小さく溜息を吐いたお兄ちゃん。
……?
「花音の面倒見るので手一杯だよ、俺は。彼女なんて作ってる暇ないだろ」
「……えっ!? 」
わっ……私っ?!
私のせいでお兄ちゃんは彼女を作らないの?!
そ、それじゃあ……彩奈は?
彩奈の気持ちはどうなるの……?
お兄ちゃんの言葉に、ショックを受けて固まってしまった私。
まさか……協力するどころか、私が彩奈の邪魔をしてしまうなんて……。
