
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第15章 君とハッピーバレンタイン
ゴソゴソと紙袋を漁りだした彩奈を横目に、そんな事を思う私。
紙袋からチョコを取り出した彩奈は、それをひぃくんの目の前に差し出すと口を開いた。
「ーーはい、響さん。義理チョコ。花音にあげたのとは味違いだから、花音と半分こにしてあげてね」
「うん、ありがとー」
堂々と『義理チョコ』だと宣言する彩奈からチョコを受け取ったひぃくんは、私に向かって「半分こしようねー」と言ってフニャッと微笑む。
「あっ……う、うん。そうだね……」
それどころではなかった私は、チラチラと彩奈を見ながら適当な相槌を打つ。
そんな私の視線を辿って彩奈を見たひぃくんは、ニッコリと微笑むと口を開いた。
「翔ならまだ教室にいたよ? 」
「……えっ? 」
ひぃくんのその言葉に、少しだけ目を大きく開かせて驚いた彩奈。
紙袋からチラリと見える、ひぃくんの物とは明らかに違う豪華なラッピングのチョコ。
それを指差したひぃくんは、小首を傾げてニコッと笑った。
「ーーそれ、翔にあげるんでしょ? 」
「えっ?! ……あっ……うん」
「まだ教室にいると思うよ? 」
少し動揺を見せる彩奈に対して、いつもの様にニコニコと笑顔で話しを続けるひぃくん。
「大丈夫だよ。渡しておいで」
ひぃくんのその言葉に、カァーッと一瞬で頬を赤らめた彩奈。
一度俯く素ぶりを見せると、パッと顔を上げてから笑顔で口を開いた。
「ーーうん、ありがとう」
……えっ? ひぃくん、もしかして……。
気付いてるの?……彩奈の気持ち。
間近で二人のやり取りを見ていた私は、驚きに見開かれた瞳でひぃくんを見上げて凝視する。
「私……行ってくるね、花音」
「……えっ?! あっ……う、うんっ! 頑張ってね、彩奈っ! 」
彩奈の声に反応した私は、勢いよくその視線を彩奈の方へ移すと、元気いっぱいに笑顔を向けた。
「行ってらっしゃーい」
私の横で、呑気な声を出してヒラヒラと彩奈に手を振るひぃくん。
やっぱり……気付いてる訳ないか。
ニコニコと呑気に笑うひぃくんを見て、そんな事を思った私。
