
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第15章 君とハッピーバレンタイン
「じゃあ……またね。後で報告するね」
「うん、また後でね」
小さく手を振る私に向かって、一度手を振り返してくれた彩奈は、少し照れたようにはにかんでからクルリと背を向けて歩き出した。
その後ろ姿に向かって小さく手を振り続ける私。
「頑張れ……彩奈」
私の口からは、そんな言葉が小さくポツリと溢れた。
大丈夫かな、彩奈……。
お兄ちゃん、彩奈の事よろしくね。
「ーー翔なら大丈夫だよ。ちゃんと大切に思ってるから、彩奈ちゃんの事」
「……へっ?! 」
……えっ?な、何……?!
ひぃくん……やっぱり気付いてる……の……?彩奈の気持ち。
……し、知ってるの?!
お兄ちゃんなら大丈夫って、どういう事っ?!
大切に思ってるって……どういう意味っ?!
驚きに見開かれた瞳で隣に立つひぃくんを見上げた私。
相変わらずニコニコと呑気に微笑んでいるひぃくんからは、その真意は全く読み解く事ができない。
「……だっ、大丈夫って……何が?! 何が大丈夫なの?! 」
一体、ひぃくんは何を知っているというの?!
焦る私を見て、ニッコリと微笑んだひぃくん。
「花音、早く帰ろう? 花音のチョコ楽しみだなー」
ーーー?!!
……えっ?!
ここでまさかのドスルーなのっっ?!!
一体、何が大丈夫だっていうの?!
……ねぇ、ひぃくんっ! スルーなの?!
そうなのっ?!
私の質問は、ドスルーなんですかっ……?!
ひぃくんを見つめたまま、プルプルと震えて立ち尽くす私。
そんな私を見てニコッと笑ったひぃくんは、ルンルンと上機嫌な様子で私の鞄を取り上げると、そのまま私の手を取って教室を後にした。
私はその後も何度かひぃくんに質問をしてみたものの、最早チョコの事しか頭にないひぃくん。
「花音のチョコ楽しみだなー」と何度も呪文のように告げるひぃくんの横で、私は一人悶々としながら帰宅するしかなかったーー。
