
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第16章 何度でも、君に恋をする
「ーーおい、響。父さんの言った事、真に受けるなよ。俺は絶対に許さないからな」
その声に反応して見てみると、恐ろしい顔をしてひぃくんを睨むお兄ちゃ……鬼がいる。
ひぃ……っ!
お、お兄ちゃん怒ってらっしゃる……。
その迫力に、思わずブルリと身体を震わせた私。
そんな私の視線に気付いたお兄ちゃんは、ひぃくんから私へと視線を移すと口を開いた。
「わかったな、花音」
「……っ! はひっ……」
あまりの恐ろしさに、そんな声を漏らした私。
な、なんで私まで……。
そんな怖い顔で見ないでっ。
恐怖に慄《おのの》く私を見て、お兄ちゃんの背後でプッと小さく笑い声を漏らす彩奈。
「ラブラブだからってヤキモチ妬かないでよー翔」
ニコニコと微笑みながらそう言ったひぃくんは、横で震えている私を抱きしめると、「翔怖いねー」と言って優しく私の頭を撫でる。
「そうだぞ、翔。ヤキモチなんて妬いてないで、お前も子作りに励めっ」
お兄ちゃんの肩にポンッと手を置いたお父さんは、そう言うとニコッと爽やかに笑った。
その横で一部始終を見ていたお母さんは、「そろそろご飯作らなきゃねー。今日は皆お夕飯食べていってね」と優しく微笑んでキッチンへと消えてゆく。
なんて自由なんだ……。
この状況で私を置き去りにするなんて……なんて薄情なの、お母さん。
自分の置かれた状況に愕然《がくぜん》とする。
今、私の目の前にいるのは……爽やかに笑うお父さんと、呑気にニコニコと微笑むひぃくん。
そして、そんな二人を恐ろしい顔で睨みつけている鬼なのだ。
そんな三人の姿を見て、薄情なお母さんを怨めしく思う。
ワナワナと震えて恐ろしい顔をするお兄ちゃんは……今にも爆破しそうだ。
あまりの恐ろしさに、目眩で気が遠くなる。
今にも気絶してしまいそうだ。
