
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第16章 何度でも、君に恋をする
怒り狂う鬼の背後にいる彩奈をチラリと見ると、随分と冷静にこの光景を眺めている。
いや……むしろ呆れてさえいる?
やれやれ、といった感じで小さく溜息を吐く彩奈。
目の前にあんなに恐ろしい鬼がいるっていうのに……よくもまぁ、そんな呑気に……。
背後にいるから見えてないのね。
そんな事を考えながら見つめていると、私の視線に気付いた彩奈とバチッと目が合い、反射的に痙攣《ひきつ》った笑顔を見せる私。
……彩奈。
あなたのダーリン……今、とんでもなく恐ろしい顔してますよ……。
私は痙攣った笑顔のまま、口からィヒッと変な声を漏らした。
「……っ誰がヤキモチだよ!! ふざけた事ばっか言ってるなよっ!! 」
ーーー!!!?
突然の鬼の大噴火に、驚いた私の身体は小さくその場で飛び跳ねる。
「どうしたんだよー翔。糖分足りてないんじゃないか? ……ホラ、飴でも食べとけ」
ポケットから飴を取り出したお父さんは、そう言って爽やかに笑うとお兄ちゃんへ飴を差し出す。
それを見ていたひぃくんは、ニッコリと微笑んで口を開いた。
「お父さんの言う通りだよー翔。あっ……間違えちゃった、お兄ちゃんっ」
そう言ってフニャッと笑って小首を傾げるひぃくん。
「……っ! 何が間違えただよっ! お兄ちゃんて呼ぶなっ! それに何ちゃっかりお父さん呼びしてるんだよっ! お前の親父じゃないだろっ! 」
その言葉に、キョトンとした顔を見せるひぃくん。
「え? だって……花音と結婚するんだから、翔はお兄ちゃんだし、おじさんはお父さんだよ? ……そうだよね? 」
「うんうん、そうだぞー響。怒りん坊なお兄ちゃんだけど、よろしく頼むなっ」
首を傾げるひぃくんにそう答えたお父さんは、ニコニコと嬉しそうに微笑んでひぃくんを見る。
「うん。でも……お兄ちゃんは本当に怒りん坊だね。まだヤキモチ妬いてるのかなー? 」
「そうだなー。花音と響がラブラブすぎるからな。……ほら翔、飴」
ひぃくんと楽しそうに話すお父さんは、そう言ってお兄ちゃんの目の前で飴をヒラヒラとさせる。
そんな二人を見て、ハラハラする私とプルプルと震えて俯くお兄ちゃん。
