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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第16章 何度でも、君に恋をする



「ほら見てー、これ。懐かしいわねー」

そう言って嬉しそうに微笑むお母さんは、アルバムに収められている一枚の写真を指差した。

そこに写っているのは、幼稚園児の私と小学生のお兄ちゃん達。

卒業写真を無事に撮り終えた私達は、その後全員で私達の家へと帰って来た。
そして、仕事の都合で卒業式に来られなかったひぃくんのお父さんの為に、すぐに写真をプリントすると言い出したお父さん。

その言葉を受けて、お母さんは久しく見ていなかったアルバムを引っ張り出してきたのだ。

「やーんっ! チビ花音ちゃん懐かしー! 可愛いわねー! 」
「本当に懐かしいわねー。あら? これ見て、ひぃくんたら今にも泣き出しそうな顔して……可愛いわねぇ」

そんな事を言いながら、楽しそうにクスクスと笑い合うお母さん達。

たった今話題に上がったその写真を覗き見ると、そこには満面の笑みの私と、今にも泣き出しそうな顔をして涙を堪えているひぃくん。
そして、そんなひぃくんを引き気味に見ているお兄ちゃんの姿が写っていた。

何があったんだろ……?
今にも泣き出しそうなひぃくんを見て、私は一人首を捻《ひね》った。

だけど、当然のことながらそんな昔の事など覚えていない。

満面の笑みで写真に写る自分の姿を眺め、その手元の絵本に気付いた私はクスリと小さく笑った。

……懐かしいなぁ。
この頃の私、確か王子様と結婚するってはしゃいでたっけ……。

シンデレラの絵本を大切そうに抱える幼き日の自分。
そんな姿が何だか凄く微笑ましく思える。

パラパラと捲《めく》られてゆくアルバムを静かに眺める私は、一枚の写真に目を留めるとクスリと微笑んだ。

それは、小学生になりたての頃の私が、ひぃくんの背中におぶられて泣いている姿だった。

これは確か……公園で遊んでいた時の写真……だったかな。
そんな昔の記憶を手繰《たぐ》り寄せる。

男の子にいじめられていた私をひぃくんが助けてくれて……。
それで、好きになっちゃったんだよね……。

そんな初恋の思い出に、何だか急に恥ずかしくなる。

一人ソワソワとし始めた私は、チラリと周りの様子を伺うと、誰にもバレていない事を確認してホッと息を吐く。


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