
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第20章 ★お兄ちゃんは心配なんです〜side翔〜
「翔、知ってる? 本の中の王子様は金髪で白馬に乗ってるんだよ? 」
「……」
「だから、まずは外人にならないとダメなんだー」
「……」
「俺ね、将来王子様になろうと思うんだっ! ねぇ翔、なれるかなー? 」
「あー。はいはい、なれるといいねー」
響のアホくさい将来について、適当な返事を返す俺。
俺は一体、何でこんなくだらない響の会話に付き合っているんだろう……。
「花音、喜ぶかなー」
ヘラヘラと笑いながら、そんな事を呟く響。
あぁ……なるほどね。
俺は昨日の出来事を思い出すと、突然響の口から出て来た王子話に一人納得をした。
『わたし、おーじさまとけっこんするー』
昨日、俺が読んであげていた絵本の中の王子様を見て、キラキラとした笑顔でそう言い放った花音。
その横で、ショックで固まってしまった響。
……俺は知っている。
その後、廊下で一人シクシクと響が泣いていた事を。
園児に見事に振られて泣く響……。
面白すぎだろっ。
昨日の事を思い出した俺は、堪らずプッと小さく笑い声を漏らした。
「翔、どうしたのー? 」
未だにヘラヘラと笑っている響が、俺を見て「何、なにー? 」と聞いてくる。
「いや……まぁ、頑張れ」
「うんっ、頑張るよー。 絶対に王子様になるんだー」
いや……頑張っても王子にはなれないだろ。
頑張れと無責任な事を言ったのは自分のくせに、ヘラヘラと笑う響を見て呆れる俺。
「花音はお姫様だから、花音も外人にならないとねー。なれるかなー? 可愛いからなれるかなー? ……うん、なれるっ 」
そんな事をブツブツと呟いては、真剣な顔をしたりヘラヘラしたりと忙しい響。
頼むから花音を巻き込むのだけは辞めてくれ……。
そんな風に心の中で思いながら、俺は無言で響の横を歩いて帰宅したーー。
