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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第20章 ★お兄ちゃんは心配なんです〜side翔〜



「ただいまー」

家に着いた俺は、リビングの扉を開けると中へ向かって声を掛けた。

「お帰りー、翔」

キッチンから顔を出して優しく微笑むお母さん。
その足元から、ピョコッと顔を出した花音が俺を視界に捉えると駆け出した。

「おにぃーちゃーんっ! 」

そのまま一直線に俺の方へと向かってくると、勢いよく抱き付いた。
そんな花音を抱きとめた俺は、少しだけ花音を引き離すと口を開く。

「ただいま、花音」
「おかえりぃー」

俺が優しく頭を撫でてやると、ニコニコと嬉しそうに笑う花音。

「今日は花音にプレゼントがあるんだよ」
「ぷれぜんと? 」

言いながらランドセルを床に置くと、俺はその中へと手を入れた。
そんな俺の行動を興味深そうに見守る花音。

目当ての物を掴んだ俺は、花音の目の前まで手を持ってゆくと、その掌を開いて中の物を見せた。

「ーーほら、これ。花音にあげるよ」
「あーっ! うさぎさんだーっ! 」

図工の時間に作ったマグネットを見せると、花音はピョンピョンと飛び跳ねて喜んだ。

「かわいいねーっ! 」

どうやらウサギの形が気に入ったようで、マグネットを掴むとはしゃぎ出す花音。

「ママーっ! みて、おにいちゃんがくれたのー! 」
「わぁー、良かったねぇ花音。ちゃんとお兄ちゃんにありがとうはした? 」

そんなやり取りがキッチンから聞こえた後、再び走って俺の元へと戻ってきた花音。
満面の笑みで俺を見上げると、マグネットをかざしながら口を開いた。

「おにいちゃんっ、ありがとー 」

こんなに喜んでもらえるなら、花音の為に作った甲斐もあったというものだ。

「どういたしまして」

クスリと笑い声を漏らしてそう答えると、そんな俺を見て満足したのか、花音は再びキッチンへと消えていった。

「くっつくよー? ママみてー、くっつくんだよー? かわいい? 」
「わぁー、本当だねぇ。可愛いねー」

キッチンからは、きっと冷蔵庫にマグネットを付けて遊んでいるのであろう、そんな花音の声がする。

無邪気に遊ぶ花音の声を聞きながら、俺は床に置いたランドセルを掴むとリビングを後にしようとした。

ノブに手をかけて扉を開けようとした瞬間、カチャリと音を立てた扉は俺の目の前で自動で開いた。

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