
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第20章 ★お兄ちゃんは心配なんです〜side翔〜
「ただいまーっ! 」
そんな軽快な声を乗せながら開かれた扉。
そこから現れたのは、相変わらずヘラヘラと笑っている響だった。
……何がただいまだ。
ここはお前の家じゃないだろ。
「あっ、ひぃくん。お帰りー」
キッチンから顔を出したお母さんが、優しく微笑むと響にそう応える。
馴染みすぎている……。
最早、毎日の恒例になりつつあるこの光景に、突っ込む気力さえなくなり溜息を吐く俺。
「ひぃくーんっ! おかえりぃー」
響に気付いた花音が、ニコニコと満面の笑顔で響に向かって走り寄った。
「かのーんっ! ただいまーっ! 」
響は花音を抱きしめると、その頬にスリスリと頬ずりをしながら、「花音は可愛いねー」と何度も呪文のように告げる。
「ーーおい。もう離れろよ、花音が呪われるだろ」
俺がそう告げながら響を引き離すと、響はヘラヘラと笑いながら口を開いた。
「えー? 何それー? 翔って変な事言うねー」
「……響にだけは言われたくないよ」
呆れた顔で響を見ながらそう告げると、「変なのー」と言ってクスクスと笑い出す響。
……お前以上に変な奴なんて俺は知らないよ。
目の前の幼なじみを見つめ、俺はそんな事を思う。
「ーーあのね、ひぃくんみてー。おにいちゃんがくれたの。かわいい? 」
そう言ってウサギのマグネットを見せる花音は、ニコニコと微笑みながら響を見上げた。
「うん、花音は可愛いよー」
ヘラヘラと微笑む響を見て、不思議そうな顔をする花音。
イマイチ話の噛み合っていない二人を見て、響のアホさにイライラとする。
