
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第20章 ★お兄ちゃんは心配なんです〜side翔〜
「あっ。それ今日作ったやつだねー。俺も花音にあげようと思って持って来たんだよ? 」
やっと花音の手元にあるマグネットに気付いた響は、そう告げるとニッコリと微笑んだ。
……えっ?
いや、ちょっと待て……今響のヤツ何て言った?
まさか……あれを花音にあげるつもりなのか……?
今日の図工で作ったマグネットは、形は各自好きな物をモチーフに作っていいとの事で、花音にあげる予定でいた俺はウサギにした。
図工の授業を思い返した俺は、あの時見た響のマグネットを思い出してみる。
あれは……恐らく人の顔なのだろう。
口は大きく裂け上がり、目玉はまるで飛び出しているかのよう……。
何とも不気味な人間……なのか……?
あれじゃホラーだ。
……冗談じゃない。
あんなもの花音にあげるなんて、怖がらせるだけだ。
そんな事を考えていると、響がポケットから何かを取り出して花音に差し出した。
……ヤバイッ!!
焦った俺は、2人に向かって咄嗟に口を開いた。
「わーーっっ!! 」
ーー?!!
何事かと、目を見開いて驚く響と花音。
「……っビックリしたー。どうしたの? 翔。急に大声なんか出して」
「それをよこせっ! 」
響の手を勢いよく掴んだ俺は、その掌の中身を奪おうとこじ開ける。
「……飴? 」
コロンと転がる響の掌の上の飴を見つめ、小さく呟いた俺。
な、なんだ……飴……か。
俺は飴の為にあんなに必死に……。
ハハッと小さく渇いた笑い声を上げた俺は、チラリと響達の方を見た。
「翔……それ、花音にあげようと思ったのに。……お兄ちゃんなんだから、我慢しないとダメだよ? 」
「あっ……いや、ごめん。これはあげるよ、花音」
怯えたような顔で俺を見つめる花音に謝罪した俺は、花音の手を取るとその掌に飴を乗せてあげる。
何やってるんだ、俺は……。
