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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第22章 ★お兄ちゃんの受難



「……っう。気持ち悪いっ」

ーーー!?

突然、目の前で朝食を食べ始めようとしていた花音が、そう言って真っ青な顔をして口元を抑えた。

やっぱり具合が悪かったんじゃないかっ……!
何で言わないんだよ!

「……おい、花音っ! 大丈夫か?! 」
「無理……っ」

余程具合が悪かったのか、花音は慌てて席を立ち上がるとリビングを出て行く。

それを追いかけるようにしてリビングを出た俺と響は、開かれたままの浴室所に入ると口を開いた。

「大丈夫か?! 」
「花音っ! 大丈夫?! 」

洗面所で嘔吐する花音を見ると、酷く辛そうでとても大丈夫そうには見えない。

「風邪でもひいたのか?! ……熱は?! 」

心配そうに花音の背中を摩《さす》る響の横で、俺は花音の額に手を当ててその熱を測ってみる。

熱はないみたいだけど……。
これは病院に連れて行った方がいいな。

滅多に風邪などひかない花音が辛そうに嘔吐し続ける姿を見て、軽くパニックになった俺は保険証はどこにあったかと、一瞬そんな事を考える。

「病院行くぞ、花音。自力で歩けるか? ……歩けないなら俺が連れてってやるから」

そう言って抱え上げようとすると、花音は辛そうにしながらも俺の手を制した。

……?

とても辛そうな顔をしながら、涙目になった瞳で俺を見つめる花音。

「……違うの」

え……?

「病気じゃない……っ」

そう言ってボロボロと泣き出した花音。

……えっ?
じゃあ何でこんなに嘔吐してるんだよ。
それに……何でそんなに泣くんだ……?

次から次へと涙を流し続ける花音を見て、俺の心拍数はドクドクと早鐘を打ち始める。

嘘だろ……。

……最近めっきり食欲の落ちた花音。
朝食を食べようとした途端に具合が悪くなった花音。
俺に何も話そうとしない花音。

……全て合点がいく。
でも……まさか……。

「……花音……っお前、妊娠してるのか……? 」

……そんなわけあるか。

自分で言った言葉にそんな否定をしながらも、目の前で泣き続ける花音を震える瞳で見つめる。

違うと言ってくれ。
そんな願いを込めて……。


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