
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第22章 ★お兄ちゃんの受難
「……っお兄ちゃ……っどうしよう……私……っ。赤ちゃん……できちゃったよぉ……っ」
それだけ言うと、花音は顔を歪めて号泣し始めた。
嘘……だろ……?
目の前で号泣する花音を見つめ、愕然《がくぜん》とする俺の顔からは一気に血の気が引く。
……誰か嘘だと言ってくれ……。
小さく震えて泣き続ける花音の姿を見て、激しく動揺する俺は顔を歪めると花音を抱きしめた。
「大丈夫……っ。大丈夫だから……花音、心配するな……っ」
そんな事を言ったってどうすればいいのか解らないのは自分も同じくせに、俺はまるで自分に言い聞かせるかのように何度も「大丈夫だ」と繰り返す。
……どうすればいいんだよ。
花音はまだ高校生なんだぞ……っ。
そんな事を考えながら、腕の中にいる小さな花音をギュッと抱きしめる。
「花音っ……! 本当にっ!? 本当に妊娠したのっ!? 」
それまで固まっていた響が、突然嬉しそうな声を上げると花音の肩を掴んだ。
「……ひぃ……っぐ……っ……」
「おめでとうっ! 花音っ! 」
泣きながら響を見上げる花音に対して、「おめでとう」と言って嬉しそうにヘラヘラと笑う響。
何がおめでとうだ……っ。
こんなに泣いてるじゃないか……っ……!
何でちゃんとしてやらなかったんだよ……っ!
俺はっ……お前の事を信じてたんだぞっ!!?
「……響っ!!! 」
あまりの態度に頭にきた俺は、響の胸倉を掴むと鋭く睨んだ。
「何やってるんだよっ!? ……妊娠なんてさせるなよっ!! 花音はまだ高校生なんだぞっ!!? 」
「どうしたのー? 翔。心配しなくても大丈夫だよ、結婚するんだから」
ニッコリと笑ってそんな事を言う響。
大丈夫ってなんだよ……っ。
これのどこが大丈夫なんだよ……っ!?
……どう見たって同意じゃないだろっ!!
涙を流す花音をチラリと見て、俺は悔しさに顔を歪める。
何でっ……何でもっと大切にしてくれないんだよ……っ!
……っお前は絶対に花音を傷つけないって信じてたのに……っ!!
「……っふざけんな響っ!!! 」
ーーー!!!
胸倉を掴む手をミシリと軋《きし》ませた俺は、悔しさを滲《にじ》ませた顔で怒り任せに拳を振り上げたーー。
