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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第22章 ★お兄ちゃんの受難



ーーードサッ

「……っ……! 」

床に転がった俺は瞼を瞬《しばた》かせると、ぶつけた肩を摩《さす》りながらゆっくりと上半身を起こした。

「……夢……か……? 」

今しがた自分が寝ていたのであろうベッドを眺め、ポツリと小さな声を漏らす。

「なんて夢見てんだよ……っ」

グシャリと前髪を掴むと、ドクドクと早鐘を打つ胸にそっと手を当ててみる。
それは普段と比べると尋常じゃないぐらいの速さで、余程の動揺があったのだと自分でもわかる。

夢で良かった……。
そう思うと安堵から大きく溜息を吐いた。

俺は暫く床に座ったまま気分を落ち着かせると、ふらりと立ち上がってリビングへと向かった。

ーーーカチャッ

扉を開けるとそこには花音と響がいて、普段と変わらない光景にホッと息を吐く。

俺はグラスにジュースを注ぐと二人のいるリビングまで行き、ソファに腰を下ろして上から二人の姿を眺めた。

床に広げた幾つかのパンフレットを眺め、床に座った花音と響が何やら楽しそうに話している。

どうやら、高校卒業祝いとホワイトデーを兼ねて何処かに遊びに行く計画を立てているようだ。

「花音、せっかくだから遠出しない? 」
「でも……そしたら泊まりになっちゃうし高くなるよ? 」
「大丈夫だよー、お金ならあるから」
「うん……でもやっぱり……」
「どうしたの? 花音」

……お前を警戒してるんだよ。

泊まりになるデートなんて花音が行く訳ないだろ?
そんな事したらすぐお前に食われるだろ。
花音だってそのぐらい気付いてるんだよ、アホ。

二人の会話を黙って見守る俺は、そんな事を思いながらジュースを口にする。

「だって卒業祝いも兼ねてるのに、ひぃくんにそんなにお金出して貰うのは悪いよ……」
「そんな事気にしなくて大丈夫だよ。俺は花音と一緒にいられればそれだけで幸せだから。USO行きたがってたでしょ? 一緒に行こうよ。……ね? 花音 」

ヘラッと笑った響は、そう言うと小首を傾げて花音を見つめる。



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