
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第6章 君はやっぱり凄く変
「やったー! ありがとう、ひぃくん!」
ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶ私。
そんな私の腕を掴んだお兄ちゃんは、私を椅子に座らせると「お皿持ってくるから座ってな」と言ってキッチンへ消えてゆく。
「いっぱい買ったんだー。花音どれ食べたい?」
ニコニコと微笑むひぃくんに箱の中身を見せられ、私はキラキラと瞳を輝かせた。
どれも美味しそう……。
んー迷うなぁ。
あーでもないこーでもないと悩む私を見て、ひぃくんはクスリと笑う。
「半分コにして色々食べてみる?」
「うんっ!」
ひぃくんの提案に即決する私。
今日は何ていい日なんだろう。
宿題は終わったし、シュクレのケーキは食べれるし……。
……幸せだなぁ。
思わず顔がニヤけてしまう。
お兄ちゃんの持ってきたお皿にケーキを取り分けると、私達は三人でケーキを食べ始めた。
半分コな私は、ひぃくんから「あーん」なんてされているけど、今の私は幸せだから気にしない。
素直に食べさせてもらっている私を見て、ひぃくんは随分とご機嫌の様だ。
「可愛いねー花音」
そんな事を言われながらケーキを口に入れられる私は……
さながら餌付け中の犬だ。
お兄ちゃんの視線がちょっと痛い。
「宿題も終わった事だし、今度花音の行きたいとこ連れて行ってあげるね」
「本当?!」
「うん。どこに行きたいか考えといてね」
ニッコリ笑ったひぃくんはそう言うと、私へ向かって顔を近付けてくる。
えっ?
と思った時には遅かった。
ひぃくんは私の唇に付いたクリームをペロッと舐めると、フニャッと笑って「美味しー」と言った。
「響っ!」
慌てて椅子から立ち上がるお兄ちゃん。
えっ……え?!
えーーっ!!?
握っていたフォークを落とした私は、口元を抑えると呆然とした。
私……の……ファーストキス……が……。
呆然としたまま隣を見ると、そこには幸せそうにニコニコと微笑むひぃくんが。
な、なかった事にしよう……。
なかった事にすれば……
きっと大丈夫。
これはキスじゃない。
犬に舐められただけ。
大丈夫……ひぃくんは犬。
訳のわからない暗示を自分にかけた私は、思いっきり痙攣った笑顔でひぃくんを見つめたーー。
