
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第6章 君はやっぱり凄く変
「海に行きたい!」
「海はダメ!絶対ダメ!」
「ひぃくんの嘘つきっ!この前行きたいとこ連れてってくれるって言ったのにっ!」
私は今、自宅のリビングでひぃくんと口論をしている。
海に行きたいと言う私に、ひぃくんは首を縦に振ってくれないのだ。
ひぃくんの嘘つき……。
行きたいとこ連れてってあげるって言ったのに。
「ひぃくんなんて嫌いっ!」
プイッと顔を背けると、ひぃくんは焦った様に私の顔を覗き込んで口を開く。
「ごめんね、花音。でも……裸で海に行くなんてダメだよ」
悲しそうな顔でそんな事を言うひぃくん。
な、何なの?!
この前の時といい、裸裸って人を変質者みたいに……!
「裸でなんて行かないよっ!ちゃんと水着着るもん!」
「あんなの裸と一緒だよーー!!」
私の肩を掴んでガクガクと揺らすひぃくんは、大きな声でそう叫んだ。
み……耳が痛い……。
至近距離で叫ばれた私の耳は、鼓膜が破れるんじゃないかってくらいにキーンとする。
「……もういい。ひぃくんとは行かない」
私の言葉にショックを受けたのか、ひぃくんは目を見開いたまま固まってしまった。
もういいもん……。
ひぃくんとなんて行かないんだから。
彩奈と一緒に行くもん。
ひぃくんなんて知らない!
そう思って立ち上がると、突然ひぃくんが私の腕をガシッと掴んだ。
驚いた私が振り返ると、ニコッと笑ったひぃくんが口を開く。
「プールならいいよー」
えっ?
プール?
プールならいいの……?
本当は海に行きたかったけど、この際プールでもいい。
「本当?!」
「うん、今からプールに行こう。着替えておいで、俺も準備してくるから」
そう言ってニコニコ微笑むひぃくん。
何で突然いいと言い出したのかはわからない。
だけど、プールに行けるならそんなの何でもいい。
「うんっ!わかった!」
笑顔でそう答えた私は、ルンルン気分で二階へと上がって行った。
この時の私は、まさかあんな地獄のプールが待ち受けているとは思いもしなかった……。
