
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第8章 そんな君が大好きです
「ひぃくん、これ気持ちいいよ」
そう言ってひぃくんに水風船を差し出す。
ひぃくんは水風船を受け取ると、掌でコロコロと転がした。
「んー違うなー」
……何が?
私をチラリと見たひぃくんは、腕の中にあるひよこをヒョイっと取り上げた。
「あっ!これだー。気持ちいいねー」
そう言って、ひよこをモミモミと手で揉み出すひぃくん。
ビーズクッションで出来たひよこは、確かに触り心地がいい。
でも、水風船は冷たくて気持ちいいのに……。
私は返された水風船を見つめると、輪ゴムに指を通して再びヨーヨー遊びを始める。
取られてしまったひよこを見ると、ひぃくんに揉まれてグニャグニャと形を変えていた。
嬉しそうにひよこを揉むひぃくんに、私は溜息混じりに声を掛ける。
「そんなに気持ちいい?」
……私のひよこ。
お気に入りなんだけどな……。
この分だと暫く返ってこなそう。
「うんっ! 花音のおっぱいみたい!」
ーーー!?
嬉しそうな顔でそう言ったひぃくんに、私はピタリと動きを止めた。
今……何て……?
私の手にぶら下がった水風船が、力なくユラユラと揺れる。
ハッと意識の戻った私は、勢いよくひぃくんからひよこを取り上げた。
「やめてよ、 ひぃくん!」
「あー花音のおっぱい……」
「だからやめてよ、その言い方!」
二人で揉めていると、お兄ちゃんが振り返って口を開いた。
「何やってるんだよ。置いてくぞ」
どうやら会話は聞こえていなかった様で、私はホッとすると小さく息を吐く。
「おっぱいが……」
私の腕に抱きしめられているひよこを見つめ、おっぱいおっぱいと煩《うるさ》いひぃくん。
お兄ちゃんに聞こえたらどうするのよっ。
煩《うるさ》いひぃくんを横目に、小さく溜息を吐くと口を開いた。
「後でクッション触らせてあげるから……お願いだから今は黙って」
「本当?!」
「……うん」
別にクッションだからいい。
そんな風に思っていた私は、後で後悔する事になるとは思ってもいなかったーー。
