キャンディータフト(短編)
第1章 キャンディータフト
「……もうすぐ陽が落ちるね」
立ち上がって窓の外を見る大ちゃんを追って立ち上がると、私は夕陽に染まった空を眺めた。
「教室に行こうか」
「うん」
そう促された私は、笑顔で頷くと大ちゃんと並んで教室へと向かう。
「……ひよ、さっき俺の席に座ってたね。何で? 」
隣を歩く大ちゃんが、突然そんな質問を投げかけてくる。
……何で? 何でだかわからないけど……。
「大ちゃんに見つけて貰えるかと思って」
「……そっか。見つけられて良かった」
夕陽に染まった大ちゃんの横顔は、少し悲しそうに見える。……そんな気がした。
教室の前まで着くと、開けたままの入り口を潜ってそのまま教室へと足を進める。
「ひよの席はここ」
先程私が座っていた席に腰を下ろした大ちゃんは、椅子ごと後ろへ向くと目の前の机をトントンと叩いた。
大ちゃんに言われた通り、私は黙って後ろの席へと座る。
私と目を合わせた大ちゃんは、優しく微笑むと口を開いた。
「今日はひよに会えて本当に良かった」
何だか先程から少し様子のおかしい大ちゃんに戸惑う。
「うん。私も大ちゃんに会えて良かったよ。ずっと会いたかったから……」
素直な気持ちを伝えると、大ちゃんは少し悲しそうに微笑む。
まただ……。先程から、時折見せる悲しそうな顔。
私は何かしてしまったのだろうか?
言いようのない不安に、緊張した私は震える声で口を開いた。
「大ちゃん。私……何か悪い事しちゃったのかな? 」