キャンディータフト(短編)
第1章 キャンディータフト
一瞬驚いた顔を見せた大ちゃんは、悲しそうな顔をして私を見つめる。
「ひよは何も悪い事なんてしてないよ。……俺が悪いんだ。ごめんね、ひよ」
「どういう事……? 」
私の質問に、ただ黙って悲しそうな笑顔を向ける大ちゃん。
一体何だというのか……。大ちゃんをこんなにも悲しそうな顔にしているのは、本当に私のせいではないのだろうか?
拭えない不安に、私まで悲しくなってくる。
「ーーあ、いたいた! 」
突然聞こえた声に目を向けると、教室の入り口にめぐちゃんが立っていた。
そのまま教室へと入って来ると、私達の目の前でピタリと足を止めためぐちゃんは心配そうな顔をして口を開いた。
「……どうかしたの? 」
「何もないよ」
大ちゃんが小さく微笑んで答えたのに対し、私は黙って首を横に振って応えた。
「……これ、渡しとこうと思って」
少しの沈黙の後、そう言っためぐちゃんは目の前の机に封筒を置いた。
目の前に置かれた封筒には、【大ちゃんへ】と私の字で書かれている。
先程開けたタイムカプセルに入っていた手紙を、わざわざ届けにきてくれたのだ。
「ありがとう」
「ありがとう、めぐちゃん」
めぐちゃんにお礼を告げると、私は封筒に視線を移した。
これを読まれてしまえば、私の気持ちが大ちゃんにバレてしまう。
好きだと伝えたい気持ちと恥ずかしさで、私は大ちゃんの顔を見る事ができずに俯いた。
「あの……この手紙ね、一人の時に読んでね」
「うん、わかった」
「誰にも見せちゃダメだよ? 」
「大丈夫。絶対に誰にも見せないから」
大ちゃんの言葉に安堵した私は、肩から力が抜けてゆくのを感じた。いつの間にか、緊張で肩に力が入っていたようだ。
「ねぇ……」
頭上からの声に、顔を上げてめぐちゃんの方を見る。
怪訝そうな顔をしているめぐちゃん。
私はめぐちゃんの口元を見ると、ゆっくりと開かれる口の動きを目で追った。
「誰と話してるの……? 」