キャンディータフト(短編)
第1章 キャンディータフト
「ずっと待たせてごめん……」
泣きながら謝る大ちゃんの姿に、私の胸は不安でいっぱいになる。
「俺、ずっとひよの事探してたんだ……」
そんな訳あるはずがない……。
私は椅子から立ち上がると一歩後ずさった。
嘘……っ嘘……っ!
「まさか学校にいるとは思わなくて……ずっと一人で待たせてごめんね」
涙に濡れた顔で悲しそうに微笑む大ちゃん。
私は震える自分の手を見つめると、今日あった出来事を一つ一つ思い出した。
先程めぐちゃんに言われた言葉。
音楽室で不思議そうな顔をしていた瞳ちゃん。
タイムカプセルを開けた時の皆の笑顔と会話。
初めから感じていた違和感。
そうーー
私は、大ちゃん以外と目も合わせていなければ会話もしていなかった。
チラリと窓に視線を移すと外はもうすっかりと陽が落ち、教室の灯りでまるで鏡のように私の姿を映し出す窓硝子。
あぁ……そうだったんだ。
高校生になった話し。
廃校の話し。
タイムカプセルを掘り起こす話し。
大ちゃんから聞かされたその話しは、どれも私にはよくわからなかった。
窓に映った自分の姿を見て、その理由がようやくわかった。
幼い顔で涙を流すセーラー服姿の小さな自分を見て、私は小さく微笑んだーー。