キャンディータフト(短編)
第1章 キャンディータフト
窓硝子に映るセーラー服姿の自分を見つめ、私は念願だった制服のリボンにそっと触れた。
何故気付かなかったのだろう……。
いやーー本当は気付いていたのかもしれない。
それでも、認めたくなかった私は無意識に真実を見ようとしなかった。
長い間一人で大ちゃんを待ち続けている間に、私の記憶はどんどん曖昧になっていった。
大ちゃんに会いたいーーその強い気持ちだけを残して。
そんな時、突然目の前に現れた大ちゃんに私はただ喜び、大ちゃんが話す事だけを信じた。
ずっと大ちゃんと一緒にいたかったから、真実から目を逸らしていた。
ようやく真実のわかった私は、忘れていた全ての記憶を取り戻した。だけど、それはとても受け入れ難い事だった。
私は悲しみにそっと目を伏せると、真実と向き合う覚悟をする。
ーー四年前の冬、私は死んだのだ。
窓から大ちゃんへと視線を移すと、私は泣きながら微笑んで口を開いた。
「……大ちゃん。私ね、どうしても大ちゃんにセーラー服姿見せたかったの」
「うん……似合ってるよ。凄く可愛い」
そう言って涙を流しながらも優しく微笑んでくれる大ちゃん。
その姿に、約束を守れなかった事にチクリと胸が痛む。
冬休みに会いに来てくれると約束したのに、私はその約束を果たせなかった。
「ごめんね、大ちゃん。私……やっと全部思い出したよ。約束守れなかった……私、頑張れなかった……」
次から次へと流れ出る涙を拭いながらそう伝えると、大ちゃんは流れ出る涙を拭いながら咽《むせ》び泣いた。
「ひよは頑張ったよ……凄く……っ頑張ったよ」
泣きながらも懸命に笑顔を作ってくれる大ちゃんに、私は優しさを感じて胸が熱くなる。
大ちゃんを好きになって良かった……。
本当に心からそう思えた。
「大ちゃん……見つけてくれてありがとう」
「……っ……」
「……私ね、ずっとずっと……小さい頃から大ちゃんが好きだったよ」
涙を流しながらも、精一杯の笑顔を見せる。