キャンディータフト(短編)
第1章 キャンディータフト
「皆と会うのも久しぶりだね。何度かこっちには来たんだけど、高校に入ってからは皆バラバラで会えなかったし」
隣に歩く大ちゃんを見ると、懐かしそうな顔をして微笑んでいる。
何度かこっちに来ていたなんて知らなかった私は、その時に会えなかった事を残念に思う。
いつ来ていたのだろうか?
高校に入ってからなら、会えないのは仕方のない事だ。そう自分に言い聞かせる。
この島には中学校までしかない。
高校生になると皆この島を離れ寮に入って生活をするか、一日数本しか出ない船に乗って片道一時間半かけて通う事になる。
そんな不便さからか益々人口は減り、島に唯一あった中学校もこの夏には小学校と合併して一つになってしまう。
先程、大ちゃんが話していた事を思い出すと、この学校がなくなる事を寂しく感じる。
「皆に会えるの楽しみだね」
「……うん」
笑顔を向ける大ちゃんに返事をすると、少し軋《きし》む古びた廊下を二人並んで歩いて行く。
チラリと隣にいる大ちゃんを盗み見ると、だいぶ背が高くなり大人っぽくなったその姿に、何故か急に恥ずかしくなった私は慌てて顔を俯かせた。
昔は私とさほど変わらなかった大ちゃんの目線。こうして並んでみると、随分と変わってしまったのだとわかる。
可愛らしかった顔はすっかりと男の顔になり、思わず見惚れてしまうほどにカッコよく成長していた。
やっぱり好きだな……。
自分の気持ちを再確認した私は、火照った頬を両手で包むとこっそりと微笑んだ。