キャンディータフト(短編)
第1章 キャンディータフト
「久しぶりだね。皆元気だった? 」
「久しぶり。元気にしてた? 」
桜の木の下へと着いた私達は、そこで待っていた皆へ向けて口々にそう告げた。
久しぶりに見る懐かしい顔ぶれに、私の顔は自然と綻《ほころ》ぶ。
「久しぶりだね」
「うん、元気だったよ。久しぶり」
「久しぶり。これで全員集まったな」
高校生ともなるとやはり当たり前で、久しぶりに見る三人は私の記憶の中の姿よりだいぶ大人っぽく成長していた。
昔から一番背の高かった浩ちゃんは、それでも更に高く成長し、大ちゃんと並んでも少し大人っぽくさえ感じる。
昔は私と同じくらいの背丈だっためぐちゃんと瞳ちゃんは、身長も伸びてとても綺麗になった。
大人っぽく成長した皆に囲まれて、何だか一人取り残された気分になる。それでも、またこうして皆で集まれる事を心から望んでいた私は、目の前にいる三人の顔を一人一人眺めると、最後に大ちゃんを見てから微笑んだ。
「それじゃ、掘り起こしますか」
シャベル片手にドヤ顔の浩ちゃんに、変わっていないなとクスリと笑い声を漏らす。
そのままザクザクと土を掘り始める浩ちゃん。どんどん深くなってゆく穴を眺めながら、私の胸はドキドキと高鳴っていった。
中学生に上がる頃に皆で埋めたタイムカプセル。
当初の約束では10年後に開けようと言っていたけど、四年経った今、予期せぬ事態で掘り起こす事になってしまった。
それでも、四年も前の事なので当時の自分は何を考え何を埋めたのか、昔を懐かしく思うと同時にワクワクとしてくる。
皆の顔をチラリと覗くと、それは皆も同じだったようで期待に膨らむ瞳をキラキラとさせていた。
ーーーコツン
「「あっ……」」
浩ちゃんの握っているシャベルが何かにコツンと当たり、私とめぐちゃんは思わず声を上げた。
「おっ……出てきたな」
シャベルを脇に置いた浩ちゃんは、穴の前でしゃがむと今度は素手で丁寧に土を掻き分けてゆく。
土が払われ、徐々に姿を出し始めるタイムカプセル。その姿が完全に現れると、浩ちゃんの動きはピタリと止まった。
「……採掘完了」
青い缶を片手に持ち上げた浩ちゃんが、ニカッと笑いながら私達にそう告げる。