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風に吹かれて

第21章 かにむかし

学年も終わろうとする3月。
あと数日で終業式というある日、やっと原因がわかった。
なんと冤罪だった。

4月の初めにウチのクラスの半分以上が共謀して、ある騒ぎを起こして。
学校で結構大きな問題になった。

女子のリーダー格のコが中心になって計画されたそれを、私は知らなくて。
そのコとはこれまで大した接点もなく、親しく話すような仲ではなかったし、簡単に言うとメンバーとして誘われてなかったから、公になって初めて知った。

子供の悪ふざけレベルの計画は実際には悪質で、彼らは厳しく叱られたらしい。
当然、保護者にも連絡が行ったし、呼び出されたりもしたんだろう(よく知らないけど)。

何でバレたんだ?
仲間はバラす筈がない。
参加しなかった奴で、リーダーに従わない奴だろう。

てことで、私が密告者にされた、と。

部活の顧問だった教師が「もう学年も終わるから言うけど…」とご丁寧に教えてくれた。

ちなみに本当に密告したのは同じクラスの女子。
部活の顧問は別のクラスの担任で。
知っていて見て見ぬふりをしていたわけ。



は?

そんなことを今更教えられても、どうしようもないんですけど!
この一年間をどう責任取ってくれるんですか!?

あまりにも呆れて私はその先生を詰った。

怒りも露わに責めたら、本人に謝罪させるから、と。
本当のことをリーダーの女子に話して誤解を解くようにするから、と言われた。

誤解を解く?

誤解を解く?(2回目)

翌日、密告したコが通りすがりに私を呼び止めて。

「ごめんね」

小声で早口に言い、逃げるように去って行った。



数日後、終業式の後。
クラス替えになるから、と『お別れ会』なるものがあって。

配られたジュースとお菓子を皆から離れた場所で一人つまんでいたら、リーダーのコに呼ばれた。

ジュースが余っているから皆で飲もう、と言う。
回し飲みだ。

「私はいいから皆で飲んで」

そう断ると、教室が急に静かになった。
回りにいた女子が固唾を飲んで見つめている。

回し飲みが嫌なら一番最初に口を付けていいから飲め、とリーダーのコがしつこく迫る。

面倒くさいので、仕方なく最初の一口を頂いた。

それが中学1年生の最後の思い出。

リーダーのコからの謝罪はなかった。
あっても許さなかっただろう。

お陰様で人を憎む気持ちが、よーくわかった。


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