雪野かなえに想いを込めて
第7章 その温もりが愛しい
かなえさんは、ブラックコーヒーを呑んでいる。かなえさんの顔を見ているとなんだか安心して、テーブルの上に滴が零れ落ちる。
それでも私は全てを伝えたくて、頑張っても頑張っても評価されない仕事のこと。前に行かされたミーティングでのこと。人間関係が苦手でうまくいかないこと。そんなことを全部話した。
途中でふわっと温かいものを感じて、抱きしめられた。ぽんぽん、なでなでと頭を撫でられて、その温もりが愛しくて、やっぱり私はこの人が好きなんだって思った。かなえさんの彼女になれて良かったと思った。
「夢蘭は、あたしの前では無理しなくていいんだよ。そのままで充分、可愛いんだよ。ふわふわのロリィタ服でも、あたしと同じパンクファッションでも、カジュアルでも、ゆるゆるな部屋着だって。メイクしてても、してなくても。笑ってても泣いてても。どんな夢蘭だって好きだよ。だから、あたしは夢蘭を彼女にしたんだ。
それにね、こないだこっそり、黒髪ウィッグつけて眼鏡して大人数でご飯食べに行った。どの店員さんより夢蘭が輝いてて、夢蘭が笑顔を向けるお客さんみんなに嫉妬しちゃったよ……」
「かなえさん……。やっぱり、かなえさんは魔法少女だね。かなえさんのおかげで、少しずつ、いつもの私に戻っていけそうな気がする」
「そっか。でも、それはね、あたしが魔法少女だからってわけじゃない。夢蘭がここにいてくれる奇跡、夢蘭の魅力があたしにとって魔法みたいなものだから」