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雪野かなえに想いを込めて

第3章 孤独な少女とおせっかいRocker

数年後。

「ラスト、新曲を持ってきた。奏華、作詞作曲。“嫌いでも…”」

「あたしは……中学の時……嫌いな子がいて……そいつは……いじめられてた。ああたしも嫌いでそいつ見て……イライラしてた。だから見てみぬ振りしてた……。でも……そいつは……いじめに耐えきれずに自殺した……。そいつに今、届ける歌……聞いてくれ」

高校生になったあたしはベースを弾きながら歌っていた。あんなにウジウジしていた中学時代は嘘だったかのように。

客席には、かなえさんの姿はないけれど、途中から一緒に練習できなくなってしまったけれど、あの日の言葉は、あたしの心に刻まれていて、あたしにほんの少しの、ううん、大きな勇気をくれた。

いつか大きい歌番組にうつって、あたし、ここまで出来るようになったよって伝えたい。

伝えたいことがある。伝えたい人がいる。だからあたしは勇気を出して、声を音にして奏でる。ベースの音を響かせる。

奏でる花。あたしの名前は、音楽をやるために産まれてきた。そんなことを後日、かなえさんが言ってくれたから。

この音も、どうか、どうか、かなえさんに届いていますように。


fin.

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