テキストサイズ

快楽の籠

第7章 解放

目を覚ました部屋は、エリカと共にした部屋だった。
手を前にすると、ローブを体にまとっているのがわかる。
掛け布団をのけて起き上がると。

エリカは、同じくローブを羽織って、静かに僕の横で寝息をたてていた。
穏やかな寝顔だ。

エリカを起こさないように、ゆっくりベッドから離れる。
窓の外を覗く。
そういえば、快楽の籠には、窓がどこにもなかったような。
日がまさに登ろうとしている早朝。

「起きたの」
エリカがあくびをしながら起きる。
「早起きなのね」

僕はふと、部屋を見渡した。
思い出す、研修帰りにとっていたホテルの部屋だ。
「どうしたの? 見回して」

目覚める前とは、別の場所なのか?
それともやっぱり夢だったのか。

「快楽の籠が、効きすぎちゃったかな?」
そのワードに一瞬びくっとする。

エリカはにこっと笑う。
「私のオリジナルカクテルだけど、効いたでしょ?」

カクテル、そういえば、昨日は懇親会のあと、エリカに連れ出されたっけ。
「私がね、名付けたの。人の欲望を引き出す意味を込めて。文字通りだったみたいね」

エリカはベッドから起き上がると、僕の前に立つ。
「まだボーッとしてるかな? いい夢でも見た?」
エリカは僕に軽くキスをした。

その感触は、快楽の籠の時と、同じ。
忘れようのないキス。

「昨日、あれだけ激しくしたのにね」
エリカはぎゅっと抱きついてきた。
「嬉しいよ、戻ってきてくれて」

戻ってきた、のか。
ふと、あの時の体験を思い出す。
あれは、半分リアルで半分は。。

「どんなこと、したいの?」
エリカは耳元でささやいた。
「もう一度全部同じ事をしてみる?」

僕はエリカの顔を見る。
その視線が重なり、半分理解したが、半分はわからなかった。

だけどまあ、すべて彼女が僕に与えた快楽なのだろう。
今目の前にいるエリカはリアルだ。

僕は、エリカの唇をふさいだ。
エリカは目を閉じて受け止める。

もう一度この部屋で、快楽の籠を見てみよう。


(了)
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白いエモアイコン:共感したエモアイコン:なごんだエモアイコン:怖かった

ストーリーメニュー

TOPTOPへ