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娘のカラダは絶賛発育中!頼むからもう少し離れてくれ!

第1章 第一章・父と娘のきわどい関係

 1分、2分……。

 恐ろしく長く感じた時間の後、やっと大移動が収まり、ドアが閉まった頃には、俺たちは反対側のドアに押しつけられていた。

 しかしポジション取りは成功と言える。ドアを背にしているのは美鈴だったからだ。俺はそんな美鈴を守るように、ドアに両手をついていた。壁ドンの体勢だ。

「おとーさん…いつもありがと♪」

 俺の胸にしがみついたまま、美鈴が泣きそうな声を出した。

「無事で、よかった……でも悪いが、もう少し離れて欲しい……」

 懇願した。密着感がやばかった。

「離れるスペースなんかないよ?」

 そう言った美鈴の温かい息が俺の首筋にかかり、ぞくりとした。電車がやや大きく揺れた。今度は美鈴のぷっくり太った唇が首筋に触れた。

 その柔らかさ、生々しさは、俺の胸でつぶれている彼女の胸以上の破壊力があった。

 やばい!

 俺は隣にいるおっさんのハゲ頭を凝視した。
 美鈴の可憐さと対極にある醜悪なるモノに意識を集中させることで、ビリビリと体をかけ巡る熱い血潮を中和し、冷却しようとしたのだ。

 おっさんの頭に残る乏しい髪の毛が揺れた。
 美鈴の髪からシャンプーの香りが漂ってきた。
 おっさんが眠たそうにアクビをした。
 美鈴もアクビをした。
 おっさんの口の奥にある銀歯が見えた。
 美鈴の吐息がまた、俺の首筋にかかった。
 おっさんと目が合った。
 慌てて目を逸らした。
 美鈴の丸みを帯びたかわいいおでこが目に入った。
 生え際の産毛がふわふわと揺れていた。
 シャンプーの香りが一層濃くなった。

「おとーさん、大変」美鈴がふいに俺の耳元でささやいた。甘い声が耳にからみついた。「今日、ブラジャーしてくるの忘れちゃった」
「………」

 だぁぁぁぁ! そんなの普通忘れるかぁぁぁぁ! しかも俺に報告するなぁぁぁ!

「うそだけどね」と美鈴は明るく言った。
 質の悪いうそだった。俺の意識の全てはすでにおっさんから離れ、俺の胸でつぶれている美鈴の柔らかい感触に集中してしまっていた。 

 どくん、どくん。

 高鳴る胸の鼓動と共に、熱い血潮が下半身へ流れ込み始めた。天を見上げた。神に祈る時間もなかった。改めておっさんに目を向けたがまるで無意味だった。

 超満員の車内に、暴れ馬、召喚!

「どうしたの? さっきから何かキョドってるよ?」

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