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はるのかぜ

第122章 達也にも冬が

しかし、2人がやり取りして数カ月後のある日、達也は同じ部署のメンバー数十名と会社の会議室にいました。しばらくすると部署の所属長の川島淳之介がやって来ました。

「皆さん、お疲れ様です。本日は業後の時間にお集まりいただくことになり、大変申し訳ございません。皆さんに、我々のプロジェクトの今後について大事なお話がありますのでお集まりいただきました。クライアント企業であるSLD様から今年いっぱいで、我々との委託契約を終了したいとの依頼がありました。」

「えっ!」

その場にいた社員全員が声を揃えて言いました。

「まず、契約終了に至った経緯ですが、こちらは皆さんに何か問題があった訳では決してありません。数ヶ月前、他センターで起きた個人情報流出事故が要因です。本来、クライアント側の意向によるプロジェクト終了の場合、他のプロジェクトへの配転などを検討する動きとなるのですが、個人情報流出事故の影響は非常に大きく、他のプロジェクトでもクライアントとの契約終了が相次いでおり、どこのプロジェクトでも、新規採用を受け入れる余裕などない状況です。皆さんはこの度、会社都合の退職となるため、当社でもできる限り再就職先のフォローはさせていただきたいと思います。」

会議室内は、一気に暗い雰囲気へと変わって行きました。

 達也はそのあとすぐ、ハルに電話しました。

「もしもし、達ちゃん。」

「ハル、今、時間大丈夫?」

「うん。」

「実はね、今頃になってなんだけど、やっぱり個人情報流出事故の影響が出て、僕も失業しそうなんだ。」

「えっ!」

「今日、会社で話があったんだ。」

「そうなんだぁ。突然失業することになるって不安しかないよね。私もそうだったもん。達ちゃん、今は不安しかないとは思うけど、私も同じだよ。だからお互い励ましあって次の仕事探そう。」

「うん、そうだね。」

達也にも突然、冬が訪れたのでした。すでに職を失っているハル、まもなく職を失う達也、2人の運命は
どうなっていくのでしょうか?

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