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瑠奈。

第1章 愛の無い…

『小泉!』 

「はいっ!」

『お前はまた残って自主練せい!あほ!』

「はいっ!」

小泉瑠奈。15歳。
母子家庭の瑠奈は柔道の特待生として授業料免除で私立の強豪校へ入学した。

母親は瑠奈が無事に高校に入学するとすぐに、密かに交際をしていた店の客の公務員と再婚することになったが瑠奈はさほど驚かず反対することもしなかった。

長く年齢をサバ読んで水商売で生計を立てていた母親の体の心配をしなくていいと思うと反対なんてする気さえ起きなかった。

どうせ寮生活で母親と新しく父親になった男性との新婚生活には入る必要が無かったから顔合わせもせず電話口で2人の再婚に賛成した。


『おらっ、小泉!お前はまたそんなしょーもない逃げ腰しやがって!』

中学で県大会3位の成績を残し特待生として入学した瑠奈を、県外から招待されている名将と言われた柔道部の監督山岸は一番厳しく叱責する。

男女問わずペアを組んで打ち込みの練習をさせられれば、まだ入学したばかりの48kg級の瑠奈と90kg級の2年横川とでは迫力が違う…
そんな瑠奈の気持ちを見透かしたように道場の端からすごい剣幕でこちらに歩いてくる山岸は勢いよく瑠奈の尻を蹴り上げた

ドサッ!…

お尻を手で押さえ畳に倒れ込む瑠奈を見下ろし、

『ほれみぃ!受け身もろくに取れんやないかっ!何が県3位じゃボケ!天狗になっとったらすぐに他のもんに追い抜かれんど!』

「は、はいっ!」

尻を摩りゆっくりと起き上がるとペアを組んでいた横川が脇を抱えて起こしながら…

『ほら、シャンと立たないとまた怒られるぞ』

そっと耳打ちしてくれた。

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