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金曜日のおじさま

第10章 diez

「うーん、困ったねぇ…」

オレはシートに凭れ掛かって、バックミラーに視線を移す。通勤途中のサラリーマンやママチャリに子どもを乗せて走る親子が通りすぎる。

「オレの店で働くか?」

彼女は二つ返事で提案を受け入れた。

「おじさまとお仕事でも一緒にいられるの嬉しい」

無邪気に喜んでるビアルネスにオレは釘を刺した。

「ビー浮かれてる場合じゃないよ。オレは仕事には厳しいから覚悟しておく様に、公私混同はNGだからね」

「はい、おじさま。ビーがんばるね」

「期待してるよ。あと店ではオーナーって呼ぶこと」

「オーナー…おじさま…使い分けるのね」

「あと、職場ではイチャイチャ禁止だ」

オレは自分自身にも制約を掛けた。
助手席に座っているビアルネスをチラッと見やる。

「はい、おじさま。
イチャイチャも我慢する…あっ、オーナーだった」

「ハァ…大丈夫かなぁ」

オレの頭の中は不安で溢れていた。

  ◆ ◆
オレは主にフロアで動き回っている。
厨房には料理長のキールと補助のキャスがいる。

「キャスはオレの甥っ子だ」

「初めまして、カスティエルです。
よろしくね、ボクの事はキャスって呼んでイイよ」

「どぅも、キールだ。よろしくな」

紹介された2人は挨拶をした。キャスは中性的でキレイな顔立ちの青年、キールはチョイ悪オヤジ風だ。

「初めまして、になるのかな?
あっ…ビアルネスです。チョイチョイお客として来てたんだけど…あと、周年イベントにも招待されたよ。
今日から一緒に働かせていただきます。よろしくお願いします」

初日は接客の基本を教わりながら、こなすだけで精一杯で、半日があっという間に過ぎ、気づけば深夜…ビアルネスはクッタリして椅子に座っていた。

「お疲れ様、初日からラストまで居てくれて助かったよ。もう少しで終わるから待ってて」

男たちはテキパキと自分の仕事をこなしている。0時を過ぎた頃にオレのマンション戻った。

「今、お風呂入れるから待ってな」

ビアルネスを自宅に送ったのだが、ゴネられてしまい、着替えを取りに行かせてお泊りする事で納得させた。

「今日は特別だからな…それとしっかり体力付けてバテないようにしよう」

「はい、おじさま」

ビアルネスの返事はいつもイイ。可愛い…オレは甘い男だなとつくづく思う。

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