Melty Life
第2章 初デート
「来須くん、今、良い?」
あかりの顔を洋風にした感じの、いかにも女子受けの良さそうな同級生。水和の、中性的な雰囲気をまとう親友は、ショートヘアより長い焦げ茶のボブに、すらりとした長身という要素もあって、今回の衣装のセーラー服姿が無駄に垢抜けて見える。水和が単純に可愛いとすれば、百伊はミステリアスな美人。普段は男役を得手としている彼女が何故、こういった衣装をつけているかといえば、今回の演目の舞台が女子校だったからである。
その百伊に千里が呼び出されたのは、講堂から最も近い、階段の踊り場だ。
春休み中のこうした場所は、滅多に教師も通らない。秘めやかな話をするには十分な場所なだけあって、やはり千里は、事務的な話のために百伊に呼ばれたのではなかったらしい。
「来須くんと、宮瀬さん?だったっけ。二人はもうデートしたんだよね」
「ああ」
「あのさ、お節介かも知れないけど、頼みがある」
「頼み?」
「次、竹邑くんでしょ。予定ではウチの部、新歓終わったらしばらく休みの日は活動しない。水和のオフ増えるから、……」
「…………」
「あの子とも、二人きりで出かけるんでしょ」
あの子、というのは竹邑ゆうやだ。金髪に、アクセサリーをじゃらじゃらつけた、当校始まって以来の問題児。男の千里から見てもゆうやはそれなりに整った顔をしているのに、百伊からすれば、ただの不良らしい。校則違反だけを言えば、彼女の親友も、十分、該当していると思うが。…………