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数珠つなぎ

第2章 君を離さない

それは借用書。

金額は両親が抱えている借金。


一番下には……

俺の名前じゃなくニノの名前と拇印があった。


「二宮くんがね、君の借金を返済してくれたの」

「……えっ?」

俺の予想の範囲を超えた行動に、驚く以外の言葉が出なかった。

「智くんとの賭けで借金をチャラにする話は俺の勝利で無くなったけど……二宮くんが叶えてくれたよ?良かったじゃん」


俺はオーナーと賭けをした。

ニノを気に入っている客が多くて、どうしてもオーナーはこっちの世界に引き入れたかった。

そういう人がいたら、いつもこっちの世界へと落とすスカウトマンがいる。

けど、いくら甘い話を持ち掛けてもニノはそれに引っかかることがなかった。


きっとその頃から俺が好きだったんだと思う。


それに何より『俺を抱きたい』という気持ちが強かったから靡かなかった。


でも勘のいいオーナーはニノの気持ちに気づいていた。

そして俺の気持ちにも……


だからオーナーは俺に話を持ちかけた。


ニノを落として、こっちの世界に導いて欲しいと……


俺はもちろん断った。

でも、その選択肢は容易く崩れた。


『親の借金』が俺にノーという言葉を奪った。


もし断ったら、今すぐ返済を迫ると脅された。


そのことが意味すること……

両親にとっては人生の全てある『会社』を失うという事。


俺はニノと両親を天秤にかけた。

そして俺は両親を取った。


それは俺はその勝負に勝てると思ったから。

ニノの俺を『抱きたい』という気持ちを信じ、すべてをそれに賭けた。

だからこそ俺の誘惑にニノが乗らなかったら、両親の借金をチャラにすることを提案した。


そうすれば俺も、そしてニノもここから抜け出せるって思った。


その提案にオーナーは2つ返事で承諾した。


でもきっとその時からオーナーはわかっていた。


俺のために抱かれる側に回ること。

俺がその気持ちに応えてニノを抱くこと。


そしてその先にある、俺のためにニノが自分の身体を差し出すことも。

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