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数珠つなぎ

第2章 君を離さない

「おい、智」

グッと後ろから肩を掴まれ、ニノを探している俺の足を止めた。

「何すんだよ、離せっ!」

振り返ると同時に、肩に乗った手を払い除ける。


目の前には今、一番会いたくないヤツ……潤だった。


「呼んでも、止まらねーから仕方ないだろ?」

痛かったのか払い除けた手首をマジマジと見つめる。

「お前に用はない」

こんなヤツに構っている暇はない。

「俺が二宮の居場所を知っていてもか?」

背を向けて歩き出だした瞬間、思いがけない言葉が聞こえて足を止めた。

「今、何て……」

「二宮の居場所……」

「おい、教えろ!今、どこにいる!なぁ、潤!どこだっ!どこなんだ!」

早くその後の言葉を引き出したくて潤に詰め寄ると、肩を掴んで揺らした。

「落ち着け!落ち着けよ!」

普段は冷静というか、感情を決して表に出さない潤が俺の肩を痛いくらいにグッと掴んで声を荒らげる。

「どこなんだよ……教えてくれよ……」

潤の身体にすがり付きながら、ゆっくりと膝から崩れ落ちた。


今なら……

今なら、まだニノを止められる。


「お前が弱気でどうする?二宮を守れるのは、お前しかいないだろ?強く……強くならなきゃいけないんだ」

項垂れる俺にすべてをわかっているような話しぶりの潤。


もしかしてお前とオーナーは繋がっているのか?


「お前……」

「詳しい話しは後だ。どんな罰も受ける」

覚悟を決めたような力強い瞳に、怒りが込み上げたのに何も言えなくなった。

「これ……」

そして差し出されたVIPルームの鍵。

「これ…は……」

鍵を受け取ったその手が震える。


ニノがいない今、ニノの居場所を知っている潤がこれを差し出した意味。


ここはニノが初仕事をするであろう場所。


「今、二宮がここにいる」

俺の当たって欲しくない予想は当たってしまった。

「……指名が入ったのか?」

潤は首を縦に振った。

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