数珠つなぎ
第5章 お前らを逃さない
恐る恐る後ろを振り返ると、優しく微笑む亭主と奥さんが立っていた。
必死に言い訳を考える。
でも……何も思い浮かばない。
「あっ、あの……」
今の沈黙を打破しようと発した言葉は枯れ果てた声、そして喉がカラカラで次の言葉が出なかった。
落ち着け……落ち着くんだ!
「……久しぶりだね、神山くん」
亭主が発した言葉は、いつもと同じ優しい口調だった。
けどそれが俺の恐怖心を増幅させた。
「お父さん、こんなところで立ち話も何だから入ってもらったら?」
そう言うと、奥さんは店のドアを開けた。
「どうぞ」
いつも店で俺を出迎えるように、ニッコリ笑った。
俺は重い足を一歩……
また一歩踏み出して前へと進んで行く。
その中でも俺は目的を忘れなかった。
飾られていたコルクボートがある場所をチラッと見たけどそこにはない。
どこだ……どこへ隠したんだ。
そして少し埃の被ったお店を通過して、自宅へと足を踏み入れた。
もしかしたらどこかに俺の写真があるかもしれない。
「神山くん……お腹、空いてないかい?」
「えっ?」
「もし良かったら、いつもの食べていくかい?」
「すぐに帰り……」
「ちょっと、待っててね」
俺の返事を聞かず、冷蔵庫を開け準備を始めた。
「はい、どうそ」
奥さんは俺にお茶を出してくれる。
場所は違えど、いつも通っていた時と同じ光景と音。
一体、この人たちは何を考えてるだ?
恐怖が俺の思考をどんどん追い詰めていく。
「暑かったでしょ?遠慮せず飲んで」
奥さんが進めるお茶に、毒が盛られている?
俺は少し震える手で、出されたお茶を持つ。
そしてゆっくりと口に近づけ、お茶を喉に流し込む。
そのお茶は俺を苦しめる事無く、枯れ果てていた喉を程よく潤した。
「はい、お待たせ」
カタンと置かれた丼の中身は俺が通っていた時にいつも注文してた中華丼。
そんな懐かしさは一瞬で消えた。
この中に毒を仕込んだんじゃないのか?
膨れ上がった恐怖心はついに俺の思考を停止させた。
まぁ、いっか……
これが最後の晩餐っていうのも悪くないな。
目の前に座る亭主と奥さん。
逃げ場のなくなった俺はゆっくりと蓮華で中華丼を口に運んだ。
必死に言い訳を考える。
でも……何も思い浮かばない。
「あっ、あの……」
今の沈黙を打破しようと発した言葉は枯れ果てた声、そして喉がカラカラで次の言葉が出なかった。
落ち着け……落ち着くんだ!
「……久しぶりだね、神山くん」
亭主が発した言葉は、いつもと同じ優しい口調だった。
けどそれが俺の恐怖心を増幅させた。
「お父さん、こんなところで立ち話も何だから入ってもらったら?」
そう言うと、奥さんは店のドアを開けた。
「どうぞ」
いつも店で俺を出迎えるように、ニッコリ笑った。
俺は重い足を一歩……
また一歩踏み出して前へと進んで行く。
その中でも俺は目的を忘れなかった。
飾られていたコルクボートがある場所をチラッと見たけどそこにはない。
どこだ……どこへ隠したんだ。
そして少し埃の被ったお店を通過して、自宅へと足を踏み入れた。
もしかしたらどこかに俺の写真があるかもしれない。
「神山くん……お腹、空いてないかい?」
「えっ?」
「もし良かったら、いつもの食べていくかい?」
「すぐに帰り……」
「ちょっと、待っててね」
俺の返事を聞かず、冷蔵庫を開け準備を始めた。
「はい、どうそ」
奥さんは俺にお茶を出してくれる。
場所は違えど、いつも通っていた時と同じ光景と音。
一体、この人たちは何を考えてるだ?
恐怖が俺の思考をどんどん追い詰めていく。
「暑かったでしょ?遠慮せず飲んで」
奥さんが進めるお茶に、毒が盛られている?
俺は少し震える手で、出されたお茶を持つ。
そしてゆっくりと口に近づけ、お茶を喉に流し込む。
そのお茶は俺を苦しめる事無く、枯れ果てていた喉を程よく潤した。
「はい、お待たせ」
カタンと置かれた丼の中身は俺が通っていた時にいつも注文してた中華丼。
そんな懐かしさは一瞬で消えた。
この中に毒を仕込んだんじゃないのか?
膨れ上がった恐怖心はついに俺の思考を停止させた。
まぁ、いっか……
これが最後の晩餐っていうのも悪くないな。
目の前に座る亭主と奥さん。
逃げ場のなくなった俺はゆっくりと蓮華で中華丼を口に運んだ。