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数珠つなぎ

第5章 お前らを逃さない

俺の新しい会社で働く人間は、顔見知りばかりなのでやりやすかった。

そして全員、俺の過去を知らない。


会社を設立する時に、あえてその人たちをピックアップしていた。

だから俺はやり手の新社長として、振る舞うことができた。

もちろん、その実力も備えていたから誰も文句を言うヤツはいない。


そして今まで下っ端に抱かれていたヤツらも借金返済を兼ねて『売り専ボーイ』として働かせた。


だって、コイツらも俺と同じ。


社長がいなければ今頃、野垂れ死にしているヤツらばかり。


それに今更、まともな仕事なんて出来ない。


帰る場所もない。



この世界に入ったら抜け出せない。



なによりどんな形であれ、捨てられた自分を必要としてくれる事を実感できる場所はここしかないから。







「お疲れ様でした」

みんなが仕事を終えて帰った後、俺は社長室で頭を抱えていた。


社長になって数年。


『金融業』も『売り専業』も金銭面では経営は順調だ。


だだ問題は『売り専ボーイ』の質。


常連客がほとんどで新規客は滅多にない。

客は身体や相性を吟味するため、一通り売り専ボーイを指名する。

でも連続して指名を受けるには『また抱きたい』と思わせる努力は必要で、「あんあん」言って身体を開いていればいいってもんじゃない。

まぁ、素質ってのもあるだろうけどな。


現状そこそこってヤツは何人かいるが、大概は指名されなくなる。

稼げないヤツをずっと置いておくほど俺もお人好しじゃない。


例え俺と境遇であったって……


これが現実。


だだ口止めの意味も込めて借金額を減額、一か月程度の生活費を渡して店を辞めてもらう。


でもこれはある意味チャンス。

それを生かすも殺すむ自分次第。


辞めていくヤツは後を絶たないが、店に流れ着いてくるヤツも減らない。

人手は不足しないが、上客を虜にする魅力的なヤツはいない。


そしてとうとう恐れていた事、上客が俺の身体を求めてきた。


最初はご奉仕でかわしてきたけど、それも限界。


上客を逃すわけにはいかない。


一体、どうすれば……



コンコン…



その時、俺の運命を変える人物が現れた。


俺を助け、俺を苦しめるヤツが……

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