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数珠つなぎ

第5章 お前らを逃さない

潤に試練を与えるのは楽しくて仕方なかった。

働きアリを蟻地獄に落とすような感覚。


必死に落ちまいと、もがき苦しんでいる。


そしてそれを蟻地獄の近くで黙って見守っているヤツがいるはず。



お前もいつまで耐えられるんだ?



コンコン…


「はい」

「お久しぶり、翔」

ドアが開き、顔を覗かせたのは昔の俺を知る上客。


今は潤にどっぷりハマっている。


「お久しぶりです、どうされました?」

椅子から立ち上がり挨拶をする。

「これを持って来たのさ」

俺の前まで歩いてくると、1枚の封筒を差し出してきた。

「これ…は?」

封筒を開け、中身を取り出すと履歴書が入っていた。


そこに書かれていた名前と写真を見て、時間が一瞬止まった気がした。



名前と顔に見覚えがあった。



「どうだい?なかなかの美形だろ?」

「そう…ですね」

「……気に入らないかい?」

「いえ」

上の空の返事を慌てて否定する。

「君ならそう言ってくれると思ったよ。いつでも働けるらしいから」


今は動揺している場合じゃない。


「わかりました。でも、こんな上物……どこで?」

ゆっくりと客に近づいて行く。

「それは企業秘密だよ」

横に立つ俺にニヤリと笑って見せる。

「相変わらず意地悪ですね。教えて下さいよ」

肩に手を置き、少し背伸びして耳元で吐息交じりに呟くと、ピクッと震えた。


耳は弱いのは昔から変わらない。


「教えて……くれません?」

今度はズボン越しにモノを撫でた。

「どうしたんだい?」

嬉しそうに俺の顔を見つめる。


いける。

ギャップ萌えもまた武器だ。


「わかってるでしょ?」

久しぶりに求めるスイッチを入れ、潤んだ瞳で見つめる。

「それはこっちのセリフ」

俺の顔に手を伸ばすと、唇を指でなぞる。

返事の代わりにニッコリ笑ってしゃがみ込みファスナーを下ろすと、反応しかけのモノを躊躇なく口に含んだ。


久しぶりだったけど、経験がものをいう。

あっという間に俺の口内に熱を放つ。


「やっぱりお前は、最高だ」

そう言って髪を撫でた。


そして俺の欲しかった答えを残して、部屋を去って行った。


椅子に再び腰かけると、履歴書を見つめる。


潤の大切な人は……相葉雅紀。



あの時の遺族だ。

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