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数珠つなぎ

第6章 僕らは離れない

『んっ…もっと』
『ああっ、そこっ…ダメっ』

嫌でもドアから漏れ聞こえる潤の吐息混じりの喘ぎ。

頭の中でリピートされる声を必死に掻き消そうとした。


でも日数が経つにつれ、早足で向かっていた休憩室の歩みがだんだん遅くなって、歩みを止めるようになった。


俺が知らない潤を知りたくなった。


そして俺のモノは漏れ聞こえる潤の声だけで熱を帯び、反応すようになっていた。

そしてそのまま、休憩室で抜いたこともある。


最低だと思う。

誰のために潤は櫻井に身体を差し出してる?


潤だけじゃない。

智や和也も、代わる代わる好きでもないヤツに抱かれ続けている。


俺もその一人になるつもりだった。

でも潤だけじゃなく、智も和也も首を縦には振らなかった。


『これ以上、傷つく必要はない』って。


俺はまた甘えてしまった。



でもね俺……

ようやく潤に恩返しができるんじゃないかって思う。



ある日、気がついたんだ。


潤が抱いてくれる時、何度も何度も俺の名前を呼ぶ。

そして俺も、何度も何度も潤の名前を呼ぶ。



まるで互いを確かめるように……



でも、櫻井との情事の時には一切名前を呼ばない。



それがわかった瞬間、不謹慎だけど嬉しかった。

身体は生理現象で反応してるけど、言葉や心は奪われてないんだって。


信じていなかった訳じゃない。

今までずっと傷ついた俺を癒してくれて……愛してくれた。

それに俺は幾度となく救われた。



だから今度は……俺の番。



潤の初めては、知らない野郎に奪われた。

それを今さら足掻いたって、取り戻すことは出来ない。


潤はそんな自分の身体を汚れていると言う。

でも、それは違う。


心は誰にも奪われていない。

今も綺麗なまま潤の中に残ってる。



潤の心は……俺だけのものだよね?


だから、本当の潤の初めてを俺にちょうだい?



今まで客に抱かれる度に傷つき、櫻井に抱かれる度に傷ついた潤を今度は俺が癒してあげる。

俺が愛してあげる。



だから、俺を求めて……潤。


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