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数珠つなぎ

第6章 僕らは離れない

綺麗な雅紀の顔がゆっくりと近づき、唇と唇が重なった。


いつもは受け身で閉じている雅紀の瞼。


でも今日は驚いて目を見開いている俺の瞳をジッと見つめている。

そして開いた隙間から雅紀の温かい舌が入ってくると、逃がすまいと俺の舌を絡めとる。

「んっ、ぁっ……ぅ、はぁっ……」

耳に届く自分の吐息。


今日も幾度となく聞いた。


こんな俺を雅紀に見せたくない。


そんな思いとは裏腹に、身体は熱を帯びてさらなる快楽を求めてしまう。



でも、いつも感じていた嫌悪感がない。



どうして?

俺はもう、堕ちるところまで堕ちてしまったのか?



唇が離れると、愛しそうに俺を見つめながら髪を撫でる。


こんな俺にどうして優しい目を向けてくれるの?


そして雅紀の細く綺麗で長い指が俺の輪郭をなぞり、首筋を下りていく。

それだけで身体が震えて、また吐息が漏れそうになる。


こんな痴態……晒したくない。


でも身体は刺激を求め、逃げる力を与えてはくれない。


だから声を出さないように唇をグッと噛みしめ、ぎゅっと瞼を閉じて我慢した。

「潤」

俺を優しく呼ぶ声にゆっくりと固く閉じていた瞼を上げた。


今まで見たことのない雅紀が俺の瞳に映る。


俺がいつも見ていた雅紀は繊細で、抱きしめていないと消えてしまいそうだった。


だから何度も雅紀の名前を呼んで……

何度も『愛してる』って言って……


そして雅紀のことを潰れるくらい何度も抱いた。


でも今は寂しさや悲しさ不安で瞳が潤んだり揺れたりすることなく、力強いけど優しい眼差しを俺に注ぐ。

「そんなに噛みしめるから、唇……切れてるよ」

雅紀の親指が俺の唇をなぞると、赤に染まった唾液が指を濡らした。

「我慢しないで?潤の感じる声……聞かせて」

「まっ、雅紀……なに言ってるの?」

俺は聞きたくないし、雅紀に聞かせたくなんかない。


なぜ、雅紀はそれを望むの?


「もうこれ以上、自分を傷つけないで」

「えっ?」

雅紀の言葉に疑問を持った。


『これ以上』


まさか……気がついてる?


結論に辿り着いた時、それを隠そうと手を伸ばしたけど雅紀の手の方が先にその場所を捉えた。

裾を掴むと一気に雅紀は俺の服を捲し上げた。

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