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数珠つなぎ

第6章 僕らは離れない

「見るなっ!」

上半身を隠そうとした手は雅紀に捕まり、頭上で一纏めにされる。

そして俺の汚い身体が雅紀に晒される。

「どうしてこんな事……するの?」

「っ……」

俺の身体に雅紀が指を這わす。


その瞬間、身震いする俺の身体。


それは快感じゃなく……痛みの反応。


客に抱かれた日の自分の身体が嫌いで、そして汚い。


特に今日、最後に抱かれたのが……俺の最初の客。


風呂に入ると、鏡に映る自分の身体が嫌でも目に入る。


何度洗っても、綺麗にならない。

だから皮膚を指で掻く。


皮膚を剥がせば、綺麗になる。


でも痛みに負けて、手を止めてしまう。



痕跡だけを残して……



赤くなった傷をなぞるように雅紀は俺の身体に指を這わしていく。

「止めて…っ、お願い……雅紀っ」

小刻みに震える身体。

痛みから快感へと反応に変わる。


俺の想いを無視して……


雅紀は俺の懇願を無視して、身体にある赤くなった傷全てを指でなぞる。


「もっと……感じて?」

俺の頬を雅紀の温かい手が包む。


どうして俺の嫌がる事を求めるの?


「潤に触れてるのは誰?」

俺の手を取ると、頬にある雅紀の手に重ねる。

「潤の目の前にいるのは誰?」

「雅紀……」

手を伸ばし雅紀の頬に触れた。

「俺が潤に触れてる。俺が潤の前にいる。俺が潤を……気持ちよくしてる」

「んっ…」

俺が雅紀にするように、胸の飾りを爪で弾いた。

「だからもっと求めて。大丈夫、そこには心がある」

俺の胸に掌を置いた。

「こ…ころ?」

「うん。ねぇ、潤……愛する人を求めることは悪いこと?じゃあ、俺はずっと悪いことしてたの?」


そんなことある訳ない。

俺も雅紀の温もりに何度も救われた。


「悪いことじゃない!嬉しかった……雅紀が俺を求めてくれることが」

そう言うと、雅紀は起き上がった。

「おいで」

手を広げ、とびっきりの笑顔を俺に向けた。




俺の全てを……見せていい?




雅紀が俺の心の声に返事する様にゆっくりと頷いた。


俺も起き上がり、雅紀の胸に飛び込んだ。


「潤」

俺を呼ぶ声に顔を上げると雅紀の目が妖しく光った。



「雅紀……欲しい」

初めて俺は求めた。


そして身体も心も、快楽に溺れていった。

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